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【臨帝】ポッキーゲーム【腐向】

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「シャレになんないでしょ、ソレ」

拒絶、されたんだ。折原さんを受け入れようと、目を閉じた事を。
勘違いをしていた。彼が僕を構うのは僕の事を気に入ってくれてるからなんじゃ、ないかって。
もしかしたら――僕を好きだと思ってるせいじゃ、ないかって。

男の自分とキスをすることなんて受け入れられないと露骨な顔をして嫌がってみせた折原さんに、僕は深い絶望感を抱いていた。しかし沈んで行く僕を置き去りに折原さんは両手を広げてみせながら、アハハと笑い声を上げてみせる。

「君の勝ちだよ、おめでとう帝人君っ!しっかし、そういう手があるなんてね~男が男にそんな事されたら、流石にドン引きするもんね!」
「…違い、ます」
「え?」

「僕は駆け引きしたつもりも、シャレなつもりもないです。最初から全部、受け入れるつもりでした」
ぼんやりと視界を覆う感情の雫が頬を流れていくのを、自分でも止められない。

「僕は折原さんのこと、多分好きなんだと思います。でも、そんなの認めたくなくて。だって、折原さんは僕を玩具としか思って、ないからっ…!でも、キスしても嫌じゃない程度に思ってもらえてるなら、嬉しいなって。だとしたら、僕の事…少しは好きで、いてくれてるって事だよなって。そう思えば、試したくて仕方なかったんです…!」

きっと僕は本当の気持ちをこの人にぶつけたかったんだと思う。
本音を吐き出した事で、心の奥に重く圧し掛かっていたものがすっと軽くなっていった。
この後は折原さんにひどい言葉で玩ばれて深く傷つけられるんだろうなと覚悟を決めた僕は、鼻をずずっと啜り息を呑みこむ。

「え…?」

すると信じられないことに――ぐすぐすと泣きじゃくっていた僕を、折原さんが広く温かな胸に招き入れてきたのだ。
ぎゅっと強くなる腕の力に驚いて気付けば、しゃくりと涙が自然と止まっていた。

「お、折原さん…?」
「あのさ。今まで俺が…君をからかってただけだって、思ってたの?」
「はい」
「なにが楽しくてさぁ、仕事忙しいのに君をからかって遊ぶ為だけの時間を、仮眠削ってまで作らなきゃいけないのさ?お土産だって毎回ネット巡って散々悩みながら選んで。その上柄にも無くドキドキしながら、こんなボロアパートで君を待ってるとか…ありえないでしょ。おまけに、ポッキーゲームとか…好きでもない、しかも男相手にするには冗談キツすぎるって」

はあっと大きな溜息混じりに言い切った折原さんに、僕は目を白黒させる事しか出来なかった。
この人は一体何を言ってるんだろう。只それしか考えられなかった。

「俺もね。同じ。君が――好き」

嘘みたいな冗談みたいな。でも夢でも幻でもない折原さんの声は、何時もの軽快な響きではなくて。
想いをつめ込んだように深く、真剣な声で囁き掛けられて僕の全身が熱く揺さぶられた。
ずっと心の奥で求めていた折原さんが、僕と同じ気持ちだと。僕を好きだと。そう言ってくれたのだ。
折原さんの告白を受けじんわりと込み上げてくるのは、圧倒的なほどの歓喜だった。

「え…ほ、本当なんですか?!」
「本当ですかって。信用ないなぁ~ま、俺の性格知ってる君からすれば当然かもしれないけど。でもさぁ…好きだよって何時も言ってあげてるのに、君は適当に流すし。その割に俺に気がある素振りみせるし。良く判らない子だなあって正直困ってたよ」
「だ、誰が、いつ、そんな素振りなんて?!」
「文句言ったって俺がここに居ると嬉しそうだし。良く笑うし良く喋る。まあお土産上げた時は、特に嬉しそうだけどね」

そこまで過剰な感情表現をしてみせたつもりは無い。自分の些細な反応を折原さんは気に留めていたんだ。ずっと見ていてくれたんだと思えば、嬉しくてたまらなくなった。

「前からさ、どう攻めていけばいいのかなってずっと考えてたよ。ま、難易度が高いほどおもしろいけど、そろそろいい加減、決めたくてね」
「じゃ、なんであの時…突き飛ばしたり、したんです?」
「ショックだった?」
「はい」

素直にコクンと頷けば、「あーもー、なんでそんなに可愛いの!」とオーバーアクションでぎゅうぎゅう抱きしめられた。

「だって、君があんまり素直だったからさ。思わず」
「は?」
「カマかけるためにこんなゲーム仕掛けたけど…まさか上手くいくなんて思わなかったから、ビックリしちゃってさぁ~ま、キス受け入れる理由が賞金目当てって線も捨てられないし。だからわざとあんな言い方まで付け加えてみたって訳」

僕の気持ちを試す為にお菓子メーカーのイベントを利用して、こんなに沢山のお菓子を買い占めてゲームを仕掛けた、だなんて。なんて――不器用な人なんだろう。そう思えば自然と笑いが込み上げてきて、僕は遠慮せずクスクスと苦笑を漏らした。

「折原さんって、凄い情報屋さんで何でもできるって思ってましたけど…案外、ヘタレなんですね」
「なにそれ、君みたいにボケボケした子に言われるなんて、ムカツク。そもそも、君が素直じゃないのが悪いんじゃないか。散々、好きだよって言ってあげてたのにさぁ」

照れているのを誤魔化すようにブツブツ文句を言い、拗ねたように唇を尖らせた綺麗な人に思う。
遠いばかりだと思っていた存在なのに手を伸ばせばこんなに近くにあるなんてと、折原さんの背中を掴む指先に力を込めた。

「折原さん、僕を好きって言うばかりで、何も求めなかったじゃないですか。付き合ってとか、何も」
「じゃ、付き合いなよ。命令」

当然と言わんばかりに言い切る自信はあるのに、言い出す切欠を作れないなんてやっぱり不器用なんだなと思うけど、それと同時に可愛い人だなって年上に失礼だけど、そう思った。

「初めからそう言えば良かったじゃないですか」
「だって俺、一個人に告白とかしたこと無いし。振られるのとかカッコ悪いじゃない。確実にモノに出来るまで様子見て攻略すんのが当然でしょ」
「やっぱヘタレじゃないですかっ!」
「なにこの、生意気な口っ!」

折原さんが僕の顎に長い指先を駆け、両頬をグニグニと押しつぶす。僕は軽く折原さんを睨み上げながら「止めてください!」と小さな悲鳴を上げた。

そうしてどちらからとも無く笑いを零し顔を近づけると――二人の唇が、重なっていた。
信じられないほど柔らかでほのかに熱い唇は、ひどく甘い。
さっき口にしたビターチョコレートの匂いと味わいのせいでキスが甘く感じるのかと思ったけれど、僕らの間を行き交う蕩けるキスは濃密になればなるほど、甘さを増していくような気がしていた。もうチョコレートの匂いなんて、消えてしまっているというのに。

END