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神谷 夏流
神谷 夏流
novelistID. 17932
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竜ヶ峰兄弟 12月21日更新

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「帝人、着替え持ってくるから先にお風呂浸かちゃってて」
今だ喧々囂々とした声が響くリビングを後にしてバスルームに到着した。
手ぶらで来てしまったので、着替えを取って来てくれるという幽に申し訳なく思いつつも、その間に急いで服を脱ぐ。見られながら服を脱ぐなんて恥ずかしくて出来そうにない。
お湯をバスタブにザバザバ注ぎながら頭と体もついでにさっさと洗ってしまう。

母のこだわりで設えた、大人が悠に横になれる大きさのバスタブ。
その隅っこで体育座りで丸くなって、幽とお湯の溜まるのを待っている。

(何て言って説得しようかな…)
“高校生になったら家をでて一人暮らしをしたい”
来神に行くって言ってて、来良に勝手に進路変えたのは…ごめんなさい。でも来良も家からそんなに離れてないですし、同じ池袋で。今は来神も来良も偏差値はそんなに変わらないんです。それに正臣も来良だったから一緒に行きたくて。
アパートも大丈夫です。広くはないけど、来良に近くてなるべく安くてセキュリティの良いところを紹介してもらったんです。家賃とか生活費は全部自分で出します。学費は、あの、当面お世話になると思うんですが、バイトの給料が入ったらちょっとづつお返ししていきます。ですから…。
凍りつくようなリビングの空気は最後まで変わらなかった。
結局同じ事を幽にも話すしかない。これが自分の話せる全部だ。


1/3ほどお湯が溜まった頃、同じく裸になった幽が入ってきた。
「あれ?もう終わっちゃったのか。洗いっこしようと思ったんだけどな」
もうもうと立ち込めていた湯気が幽と一緒に入ってきた冷気でぱっと消えてしまった。
余分なものが一切ない引き締まった体が露に見えて、目のやり場に困ってしまう。
(随分着やせするタイプだとは知っていたけど…)
俳優も体力勝負だということだろう。
お腹が出てるわけじゃないが、のっぺりした自分の腹とは違ってうっすらと割れている腹筋とか、筋が見える二の腕とか均整の取れた体が本当に綺麗で――――。
「どうしたの。あぁ、ごめんね寒かった?」
「だ、大丈夫です!背中流しますね」


一人ではいるにはちょっと少なめ。
二人ではいるとちょうどいい量のお湯。
幽が入るのを待って、小分けにされた数種類の入浴剤の中から乳白色の物を選んで溶け込ませた。
選んだのは帝人。
(これでちょっとは恥ずかしくない…)

向かい合わせでお湯に浸かる。足を曲げているせいで膝小僧が四つ、ちゃぷちゃぷと水面を揺らしていた。
バスタブの背に凭れてリラックスしている様子の幽に話を始めるきっかけが掴めない。
それに、特に幽から帝人を責めるような雰囲気はない。
(じゃぁ、何のために呼んだんだろう?)
自分の考えを諭すためだと思っていたので緊張していたのだが…。


「懐かしいな、昔は一緒に入ってたよね?」
バスタブの淵に背をもたれ掛けて濡れた前髪をかき上げた。何気ない当たり前の仕草がとても様になる。
思わず魅入りそうになって帝人は顔を伏せた。

兄が自分たちのお小遣を使って買ってくるたくさんのお風呂グッズと様々な入浴剤。
パシャパシャとお風呂を泳ぐアヒルやラッコ。溶けるとおもちゃが飛び出る入浴剤。水の温度で色の変わるお風呂用のぬいぐるみなんてものもあった。
いかに帝人の気を引き、その日のお風呂当番の座を勝ち得るか。
どのおもちゃを使ってどんなふうに誘いをかければ帝人は堕ちるか。
世の中の流行や売れ筋などを常にチェックし、上の3人は日々綿密な作戦を練っていたのである。

「何時ごろから入んなくなったんだっけ…」
思い出すように幽が目線を上に泳がせていた。
天井からは限界まで膨らんだ水滴が、ぽちゃんと湯船に波紋を作る。

「帝人が4年生の頃?俺たちのこと名前で呼ぶようになったときからかな」
おもちゃを武器にした3人の戦いも帝人の“これからお風呂は一人ではいる!”宣言を境になくなった。
母が呆れ帰るほど溜まったお風呂グッズも活躍の場を失ってしまった。

「いや、別に…」

その頃を境に帝人の様子が少しづつ変わり始める。