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まわる、巡る

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この地方にも、ついに本格的な冬がきた。
セッカやネジ山は積雪していると聞いて、昨日さっそく行ってきた。
ヒウンのアイスが買えなくなるのはちょっと残念だけど、真白い雪に足跡をつけて歩くのは楽しいし、何より雪が作ってくれた足場が新しい場所へ導いてくれる。
季節の移り変わりを見るのが好きだ。
春の花の彩りや夏の海の青さ、秋の空の穏やかさ、そして冬の雪の眩しさ。すべて永遠に続くことはないものだけど、終わりを迎えても必ず再び巡ってくる。
それはまるで、朝日がもたらす希望のように。
人との出会いも、また。


雪を頂いたネジ山を眺めたくて、トウコはライモンの観覧車までやって来ていた。
乗り場の前には数組の男女の姿がある。そんな中でトウコはひとり、辺りを見回していた。
いつもなら真っ先にトウコを見つけてくれる女の人が今日はいなくて、そこで思い出した。
最後に彼女と観覧車に乗ったときの会話。
冬が来たら、仕事を休んで実家にもどるの。彼女はたしかにそう言っていた。少し寂しそうに微笑みながら。
トウコは毎日ここに来ているわけではないから、いつがその日で会ったのかは知らない。
けれど、彼女はトウコがライモンに来るときは必ずここで待っていた。いつも一人で。
だからきっと、彼女はもうこの街には、いないのだろう。

今日は諦めて帰ろうか。今度またベルかチェレンを誘って来ればいい。
ほんの少し隙間風が吹いた心のまま、もう一度観覧車を見上げた。


「やあ……毎日寒いよね」
声をかけられたのは、観覧車に背を向けて歩き出そうとした、まさにその時だった。
その声の方に視線をやると、一人の男の子と目が合って。先ほどの言葉は確かに自分に向けられていたのだと知る。
やわらかく微笑んだ顔、シンプルだけど質のよさそうな上品な服装。
会ったことはない、と思う。
「初めまして」
不思議に思いながらも、トウコも挨拶を返す。ついでにもう一つ、気になったことを言ってみた。
この観覧車、一人じゃ乗れないみたいだけど、と。
男の子は眉を下げて、そのことなんだけど、と、彼がここにいる理由、およびトウコに声をかけた理由を話し出した。
彼の話を簡単にまとめると、ポケモンバトルをしたい、そして時間があるなら
一緒に観覧車に乗って欲しい、とそういうことだった。
彼の提案に、トウコは了承の返事をした。
バトルならば断る理由がないし、自分だって観覧車に乗りたくてここまで来たのだ。
それに、何より。
「本当は、見るだけのつもりだったんだけど。連れもいないしね」
そうこぼした彼の表情がとても寂しげであったから。

作品名:まわる、巡る 作家名:依世