まわる、巡る
―― 「この世界にはいろんな人がいるから」
いつか博士が言っていた。旅をしている今、その言葉を心から実感している。
いい人ばかりではなかったし、考えが合わない人だってたくさんいた。
けれど、そんな人たちと出会って落ち込むより、その何倍も多くこの世界を愛する人たちとの出会いがトウコを強くしてくれた。
うん、きっと必ず、また来るよ。
トウコは、フユタの小指をすくって指きりの形を作る。
フユタが声を出す間もなく、トウコはするりとそれをほどいて、今度こそ彼に背を向けて歩き出した。急がなくては、日が暮れる。走り始めたトウコの背に、約束だよ!とフユタの声が届いた。
(ああ、暖かい)
人と出会うことが好きだ。別れることも、哀しくはない。
春が来て、ネジ山の雪が解ければ、フユタもいなくなってしまうかもしれない。
しかし、その時にはきっと、自分は新しい誰かとの出会いを迎えているだろう。
そうして季節がひとまわりする頃には、秋に出会った彼女にも再び会えるかもしれない。
季節が変わらず巡ってくるように、別れてしまった人にだって、いつかまたどこかで会えるはず。
だってこの世界はどんなに広くたって、確かにひとつに繋がっているのだ。
だから、いつかこの旅の果てで、君に会えると信じているよ。
その時はまたよろしくね。
強くつよく、ただひたむきに己の理想を追い求めていた、かの青年を思いながら、トウコは緩やかに瞼を伏せた。
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