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神様も嘘をつく こんな世界だから

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僕がきた場所は、体育館の後ろ。木が生えてはいるが、他に雑草や何か生えているわけでもない。そしてかなり更地のような広い地面が広がっている。とりあえず、途中、園芸部の倉庫から拝借したスコップで、ざくざくと土を掘り起こして、ある程度の深さを掘り、彼が包んでいたものをいれて、また埋めなおす。水嶋さんは、そんな僕の行動をぼんやりと見ていた。


そして、埋め終わって、ふーーーーっと額についた汗をぬぐいながら、振り向くと、また、彼はぽたぽたと涙を流して泣いてるようだった。

一瞬、落ちる涙がまるで真珠のように見えて…。

思わず、じーーっと、その様子を見入ってしまった。そして彼も僕の不躾な視線に気づき驚いたのか、すぐに、うつむいてしまった。


「あの…」何と言うかと思いつつ、声をかけると「僕…。情けないね。そんなの知らなくて、ずっとあそこに埋めてた。ごめんね…」嗚咽交じりの小さい声が耳を突く。何に謝ってるんだろう。多分、僕じゃない。ずっと死んでるのを見つけては埋めてたという動物に対してだろうか。


「迷信…みたいなものだから。その、すみません。」なんとなく何かもやもやした罪悪感みたいなのが出て、こんな言葉が衝いて出た。別に僕が謝ることじゃないよね。

でも、あんなところに子猫が死んでたなんて。ずっと、確か、部活や移動教室の際、毎日のように通ってたはずなのに…気づかなかった。誰も見向きもしなかっただろう。だからあんな状態であの猫は腐ってたんだ。


しかし、知ってても、きっと無視したかもしれない。だって…死体なんて汚いし。できたら触りたくない。それに、そのうち用務員とかが見つけたら適当に処理してると思うし。僕が気づかなくても、きっと誰かが何とかしてくれるだろうって面倒くさいとか良いながらも逃げていただろうと思う。罪悪感と自分の心の狭さに、言い訳しなくてもいいのに…馬鹿みたいに言い訳してしまう。

でも、そんな僕の耳に小さくそれは響いてきた。

「ありがとう…」

ちらりと、声がするほうを見ると、彼はまだ泣いてるけど、今度はこっちを真っ直ぐじっと見ていて、その涙を湛えた目はちょっと優しい色を含み笑ってるみたいだった。


トクン…と、そんな彼の顔をみたら、何かが胸に流れていく気がした。

おかしいな。たったそんな彼の優しい顔を見ただけなのに。さっきの鬱鬱した心がすっと晴れていく気がする。

「いえ。あの、顔と手…洗いにいきましょうか。」ぞわりと這い上がるものがあるのを抑えながら、にこりと相手に笑顔を返し手を差し出す。言われて、彼も、自分の服や自分の手が汚れてるのに気づき、おかしそうに笑い「ああ…そうだね。」今度は無機質でも棘の有る口調でもない。初め、保健室で逢ったときに琥太郎先生に声をかけているときのような優しい声と笑顔で僕の手を握り返してきた。


その後は、弓道部に寄ってシャワー室を貸して、衣服もある程度、泥を落とした水嶋さんを校門近くのバス停まで送り、バスが来るまでの間に色々話しをして別れた。実家に居る猫の写真を今度写メールで送るからって名目のもとメールアドレスと電話番号とか交換したりした。彼はかなりの猫好きらしく、機会があったら家に遊びに誘えばなんか来てくれそうな勢いだった。まあ今の所は、まだそこまでは誘わないけど。

そして保健室に戻れば琥太郎先生は気絶しているのか、意識がないように眠り込んでいる(うっ…寝顔がやっぱりかわいい!!)とか思いつつ覗いていると、「よっっ誉。悪かったな。」その向かいのベッドに腰掛けたまま、ぷかぷかと、どこのおっさんだよっっという風情で一樹がタバコを吹かしている。

「本当にね。この貸しは高いよ。」と言い、そのまま一樹の横に腰掛けて、彼の上着のポケットから、彼の愛用のタバコを一本失敬してそのまま咥える。そして、自分のタバコを一樹のタバコに近づけ息を吸い込み火をつけた。饐えた煙のにおいがなんか心地よい。僕もさほどタバコは好きじゃないから、たまに一樹のや桜士郎が吸ってるのを拝借するくらいだけど。なんかこういう後に吸うと落ち着いてくるなぁ。

「っていってもいいけど。今回はいいや。貸しは、無しにしてあげる。」煙を吸い込みつつぶらぶらと両足を揺らしていると。

「何だ。やっぱ、気にいったんだ。お前」ぼそりと一樹が言ってきた。
「何、それ…。今日のこと、もしかして見えてたの?」一緒に追い出したのは、仕組まれたからなのかとちょっと面白くない。すると「いいや。でも、おまえとアイツが楽しそうに話してる絵が見えてただけ。」一樹は咥えたタバコを口から指に持ち替え灰を払う。


「一応、メル友までだけどね。今は。」目の前に見える先生の寝顔見つつ、いうと、隣で、プッッ…と噴出す声がする。「何だ。そりゃ…誉。ギャグ?」くっくっと一樹がひどく意地悪く笑うのを見て思わず頬をつねってやる。いてててーーと僕のつねる力に半泣きしつつも一樹はやはり笑うのを辞めない。

「残念でした。お生憎様。僕はね。君みたいに獣じゃないから、下世話なとこからは始めないだけだよ。」なんとなく僕も可笑しくなり、笑って一樹の指のタバコを奪い取り僕のタバコとともに、僕らの間にある琥太郎先生の愛用の灰皿にゆっくりと押しつぶして消してやった。


僕は、まだ十数年しか生きてないから。今後、もしかしたら、それ以上に、綺麗なものを見つけることがあるかもしれないけれど…。

でもね。初めてだったんだ。

人の涙が、まるで真珠のように、ぽたぽたと、ただ流れる様があんなに綺麗なものだなんて思ったのは。


だから…なんとなく…手が出てしまった。

アレが僕のものになったらどんなに素敵なんだろうか。

アレがただ僕のためだけに流されたらどんなに嬉しいんだろうか。

でも、本気で手に入れるなら、僕にまず惚れさせないといけない。だから、今は、まだね。このままゆっくりと、次の手を考えつつ貴方のことを見ることにする。まだ、僕は貴方のことを何も知らない。まずは、其処から始めないと。

神様だって、欺くほどの穏やかな笑顔で、僕はしばらくは貴方のいい後輩でいることにするよ。じゃないと、今日も話してて思ったけど、きっと、気難しくガードが固い貴方は、すぐに、それこそ一樹以上に素早くするりと逃げちゃう気がする。

だから、貴方が自分から僕の中に飛び込むように、じわじわと囲いを作って閉じ込めてあげるね。

そのとき貴方はどんな顔をするのかな。

それを想像したら、じわりと僕の中の雄が鎌首を今にももたげそうで大変なんだよ。  

ねぇ   郁さん。