二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

神様も嘘をつく こんな世界だから

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

と、僕はなんとなくいきなりいわれた言葉に内心かなりムカつきつつ、そのままその後を付いて行く。すると、追いかけてきたのが気に食わないのか。ちらりと不機嫌そうにこちらを見て「君…名前、何て言ったっけ?」と、一度ちゃんと僕の名前を言ったにも関わらず、覚えてないようで、また聞き返してくる。ますますムカッ腹に発車がかかる。悔しいのでなんとなく相手の質問なんて無視だ。無視。

「それ、なんですか。水嶋さん。」にっこりと笑顔で横から追いつき覗き込んだ。

彼の腕の中にあったのは…猫の死体だった。

まだ子猫で、ところどころカラスにでも突かれたのか腹や首とか食いちぎられていて、少し腐っているのか蛆が食い荒らされた処から、ちろりと覗き蠢いていた。少し腐臭もする。

う…。何コレ。と思わずその匂いとモノに、軽く吐き気を催して顔をしかめると、その僕の顔を見て、フッ…と水嶋さんは鼻で笑い「じゃあね。バイバイ」とあとは何も言わず、ずんずん歩いていく。そして僕は、結局横は歩けず、ちょっと距離を置いてそのまま彼の後を追うことにした。

じゃあね。バイバイといわれても、やはり何をする気なのか、気になるじゃないか。猫の死体なんてどうすんだろ。解剖マニア…?いや、あれ腐りかけてるしさ。違うよね、とか思っていたら、何やら、施設棟の裏にある庭園のある一角の花壇まできて今度は座り込んで何かしている様子。

…もしかして…


「…あの。水嶋さん。」つい、背後からそっと近寄って声をかけると、彼はびくりと肩を震わせ、声をかけてきた僕のほうを見る。みれば彼の見返す瞳からは、睫毛を伝いぱたぱたと透明な涙が雫を落とし零れていた。



声かけられびっくりしたのか。そのままこちらを見ていたが、すぐに、自分が泣いてるのを見られたのが、恥ずかしいのか、横を向いて泥だらけの手で頬の涙をぬぐいだす。ちょっと顔が赤い…んーーー、なんだろ。ちょっと可愛いかもしれない。

でも、あーーあ。せっかく綺麗な顔が泥だらけだってば。

…じゃなくて…

「もしかして、ここに猫の死体埋める気ですか?ダメですよ。こんな植物の根だらけの処に埋めたらっっその子猫が静かに寝れませんよ。」そう言うと、今度は彼は泥だらけになってしまった顔で彼がきょとんとして見上げてくる。

そして不思議そうに「…なんで…ダメなの。」つぶやくように聞き返してきた。

「だって…植物の根の近くになんて埋めたら根が骨とか絡まって、仏さまは安心して眠れないって。昔、聞いたことがあるんで、埋めるならできるだけ、何もないようなところに埋めてあげたほうがいいっておばあちゃんが…」と言うと、聴いてる間に、彼はだんだんうつむいてきて泥だらけの手を口元にもっていき、なんとも複雑そうな顔をしている。

「え…と、あの。」思わず声を出すが、それから何を言っていいのやら、おばあちゃんの言葉とか意味不明だよね。しまったっっ。僕も何いってるんだか。でも、本当に昔、お花を生けながらも、命ノ尊さだの、生類は、植物も生きているだのと、あーだこーだって説教が好きだった先代の家元のおばあちゃんの言葉を姉の環と二人退屈だーと、お互い思いつつも欠伸をかみ殺しながら聴いたものだった。

そしてそんな説教をお経のように聴いて育ったためか、刷り込みとは怖いもので、何気に、こういう感じの時に、うっかりと出てしまう。うーーーん。僕は一樹と違ってある程度、育ちもいいし、優しいからね。その辺がきっと僕が一樹に先生を獲られてしまった原因のひつとなのかも。悔しいけど。


すると、下で震える声で、ぽつりと水嶋さんが話しかけてきた。「どうしよ。僕、いつもここに、昔から見つけたらよく埋めてたのに。じゃあ、あの子たち、ずっと安らかに眠れてなかったのかな。」鼻を鳴らしつつしゃべりだし、ぱたぱたと涙が落としていく。


綺麗に手入れされてるらしい爪も綺麗な色の黒いズボンも靴も泥だらけで埋めている途中らしい土から彼が首に巻いてた高級そうなストールが見える。あれに包んであの腐りかけた子猫を埋めていたのか。なんとなく、悪いこと言ったみたいで、僕も心が痛んできた。別に死んだ後とか…死んだモノにはわかんないかもしれないのに。でも、死んだ後、やっぱり苦しいとか辛いのを感じるのは嫌だよねと僕も思う。


そんな中、しばらくぼんやりしたように声もなく泣いてる彼を見下ろしていたが、いつまでもそんな事してても埒が明かない。泣いてる彼の横から、しかたなく割り込みそのストールの塊を掘り返し抱き上げる。僕の手も制服のズボンも泥だらけだ。あとで、クリーニングに出さなきゃ。と思いつつそのまま立ち上がった瞬間。下から泥だらけの手が僕のズボンをひっぱった。見下ろせば、残る片手で涙に濡れたその頬や目を拭いつつ水嶋さんが声をかけてきた。

目は泥だらけの手でぬぐったらダメだろ。ちょっと、ぎょっとする。

「返して…その子。どこ、連れて行くの。」とぐすぐす鼻を鳴らしつつ言う姿が、なんだか、昔、捨て猫を飼いたいと泣いてた今も実家に居る僕の妹たちを見ているみたいだ。幼い双子の僕の妹達は、動物が大好きな為か、捨て猫も捨て犬もよく拾ってくる。どうしても飼い主が見つからないのは仕方なくうちで飼っているが、拾ってくるたびに怒ってはよく環や両親と飼い主探しに奔走したのは今でも懐かしい思い出。今でもお弟子さんたちと協力しつつ世話しているが、犬や猫がうちには合わせると十匹近くいる。ちょっとしたムツゴロウファミリー状態だったりする。以前、一樹と桜士郎がうちに泊まりに来たときもかなりびっくりしてたし。本当そういう意味でもうちは変ってる。

それにしても、なんかもう初めに見たあの綺麗なイケメンの印象がないよ。水嶋さん。

と、天を仰ぎ、何とも…複雑だが。ハア…とため息をついて片手でズボンのポケットからハンカチを取り出してそのまましゃがみこむ。ストールはそのまま脇において、まず自分の手を綺麗に拭いてから、汚れたハンカチはまたその辺に放り投げ、今度は、別のハンカチを出す。つねに僕はハンカチはいくつか持ち歩いてる。いざって時の嗜みだよね。ハンカチとティッシュは。男だろうが女だろうがこれを持ち歩いてないのは許せないな。そして片手を彼の泥だらけの頬に差し入れ固定した後、涙と泥でぐちゃぐちゃになってる彼の顔を拭き始める。そんな僕の行動にびっくりしたように目を見開いて「ちょ…何っっ」横を向こうとするので「じっとしてっっ」つい妹達に注意するような厳しい口調で言うと、彼も急に僕が荒げた声で話したのに驚いたのか、そのまま、びくりと身体を震わせて目を見開いたまま、こちらを見返し動かなくなった。なんか顔だけ見るとまたじわりと目を滲ませて泣きそうだ。その顔を見て、(しまった!!うーん。しかたないな)としばらく思案し、ちょっとさっきよりトーンを柔らかめにしつつ

「あのさ。ここじゃなくて、もっといい場所があるから。其処に行こう。付いてきてよ」と言いその泥だらけの手を握り、立たせて彼を引っ張るように歩き出した。彼は何もいわず、ただ僕に手を引かれながら、ついて歩いてきた。