二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

アムネジア

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 士郎が観たものは恐らく。英雄となったエミヤシロウの記憶と、現在の士郎の記憶と、己の願望が混ざり合って映し出された予想図のようなものだろう。
 そう。エミヤシロウが世界との契約を結んだあの瞬間を。この手でそれを阻む事があるならば、と幾度となく夢想した、オレの未来視だ。
 
 同一の根源とは言え、自分と彼が同一の歴史を重ねるとは限らない。しかし可能性は皆無ではない。その不安要素は常に心の何処かに燻り続けていた。それは自分だけのことだと思っていたのだが───
 
「抜かったな。オレが想像出来ることであれば、それはお前も同じことだった」
 
 湿る額を肩に預け眠る少年を起こさぬように、独り言のように呟いた。
 心が通じ合うのは悦びもあるが、こうした副作用も生じることを肝に銘じた。
 

 
 悲しませたくはない。泣き顔などは、見たくない。それでも、この望みは深く魂に焼き付いてしまって消える事はない。
 こうして身と心を合わせてしまった以上、どうにもならない矛盾に煩悶を続ける。
 こんなものは一人で背負えば良かった筈なのに。



「───そんな夢は忘れてしまえ。士郎。それは今のお前が受ける痛みではない」
  
 まじないの様な囁きで、
眠る耳元に振り落とすのは
 せめてもの、償いと、
小さな願い。
 
 
 
 
 どうせ、いずれ来るものならば。
 今は無責任に忘れておけば良い。
 予行練習などしたところで意味がない事ぐらいは───



 End.
作品名:アムネジア 作家名:光杜匠生