イタミ~ YG_side
騎士の定め
立ちつくすスガタに、涙目になりながらも縋りつくワコ。
それはそれは美しいワンシーン。
目の前の情景は『現実』。
『王』と『巫女』との絶対的な関係。
自分は『騎士』。この2人を護り抜くモノ。
この『現実』を…護る…モノ。
「くぅ…っ」
…左腕が…焼けるように痛い。
左腕を容赦なくたたき壊されたタウバーン。
綺羅星十字軍の電気棺による遠隔操作ではなく、タクトは直接搭乗している為
サイバディが被ったダメージは、そのままダイレクトにバックされる。
「ごめん…タウバーン…僕、まだまだだな…」
『ゼロ時間』からもどると、そこには『現実の時間』があった。
物陰から2人を見つめ、つい苦笑が漏れる。
自分は何を期待していたのだろう…。
『あたりまえ』な事をしただけだろう?
タクトは激痛の走る左腕をかばいながら木に凭れ、力なく目を閉じる。
「しかし…あの光の槍は…一体?」
ワコはスガタだと言ったが…。
現状『ゼロ時間』にはタクトとワコ、そして綺羅星十字軍しか入り込めない。
そこで起こった事、あった事は、まだ…王のサイバディ、ザメクとアプリボアゼして
いないスガタが知るすべはないはずだ。そう…ワコからの口伝え以外は。
「つ…」だんだん腕の痛みがましてくる。
折れてはいないだろうが、熱を持っているのは確実。油断したつもりじゃないけど。
破壊されたサイバディは修復不可能とされているが…タウバーンは違う。
第3フェーズに達しているタウは、自らのオリハルコンを駆使して修復をはじめている。
「…なんだかなぁ…」
あまりの自分のふがいなさと情けなさ…そして…
目の前の『現実の2人』。
「あ~あ…イタイな……」
もう苦笑するしかない。
腕をかばうように、木を背にして座り込む。
自らの頬を流れ落ちるモノにも気付かず。
作品名:イタミ~ YG_side 作家名:あやの