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駅近築浅ペット付き?

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「おい、」
「―――静雄さんに似てると思って、そしたら飼いたくなりました!」
「へ?」
「あ」
どうやって誤魔化そうかと考えていたはずなのに、するりと本音が口を吐いた。
ヒ、と呟くような声が店長の口から漏れて、帝人は目を閉じて衝撃が来るのを待った。殴られるよりは投げられる方がいいなぁ、頭や顔じゃ傷が隠せないし。肋骨とかも面倒くさいから、上手く受身が取れるといいのだけれど。
…などと思っていたのだが。
「俺に似てるって? …コレが?」
意外そうな声は怒ってはいない。何故か怒っていない。
「え、…っと、あの、子犬は僕も違うなぁって思ったんですけど…、盲導犬とか救助犬になる犬なんですよ。街頭募金とか、テレビで見たことないですか?」
「ああ…、あれか」
え、なに? ひょっとしてセーフ?
そっと門田を窺うと、ほう、と息を吐き出すのが見えた。と同時に、緊張していた身体から力が抜けていく。
どうやら恐れていた事態にはならなかったらしい。
「大きくなると、体重70キロ前後になるらしいです」
「…俺もそんなもんだな」
「静雄さんだと、一緒に寝たら僕の方がつぶされそうですよね」
「猫よか丈夫だろ?」
「それはそうですけど」
ちょい、とガラスに手を添えると、やんちゃな子猫がくんくんと鼻先を近づけてくる。左右に動かすと目で追う仕草が可愛いが、…いや、やっぱり大きい方がいい。ふわふわの毛並みに顔をうずめて、一緒に昼寝とかしてみたい。
「…部屋はそのうち引っ越すとしても、問題は散歩と餌ですよね。学校行ってる間は、部屋に閉じ込めとかなきゃなんないんだし…」
「おいおい、そこまで飼いたいのか?」
真剣に考え込む帝人に、門田が呆れたような声を漏らす。
「うーん、いや、無理なんですけど。わかってはいるんですけど…」
「やめとけよ」
「…どこかに大きくて夜一緒に寝れて散歩は勝手に行ってくれる、そんな手の掛からない犬いませんかねー」
半ば本気で言ったのだが、そんな都合のいい、と門田には笑われた。そうれはそうだと自分でも思う。
実家の方は田舎だったから、鎖を外すと勝手に散歩して帰ってくる犬がいなかった訳でもないが、この池袋でそんな真似をしたら、首輪や迷子札を着けていても通報されて保健所行きだ。
「……俺ならどうだ?」
ふと、真面目な声で不真面目な内容を問われて、帝人は声の主を見上げた。ふざけているようでもなさそうだが、これはアレか、静雄なりのジョークというやつか。
さっき似てると言ったから、ひょっとして自分に合わせてくれているのだろうか。
「―――確かに、静雄さんなら理想的ですよね。散歩も食事も自分でしてくれて、ついでに時々僕の分もご飯作ってくれると嬉しいです」
「凝ったもんは作れねぇぞ」
「十分ですよ! あ、でも食費がすごいことになるのかな…」
「自分の分は自分で出す」
「じゃあ、後は部屋とお風呂ですよね。4畳半じゃさすがに狭いし、今の部屋お風呂もないですしねー」
「お前がうち来りゃいいじゃねぇか」
「あ、そっか」
万事解決、と笑うと、サングラス越しにその目が和んだ。『微笑む静雄』という滅多にお目にかかれないものを前に、店の店長が目を白黒させている。門田も似たような表情をしているから、もしかするとこれはものすごく珍しい光景なのかもしれない。
ふわりと笑う表情に、帝人は今彼を写メれない自分が非常に残念だった。こんなレアモノ勿体無いと本能は訴えるが、さっきの今で、さすがに携帯を構える度胸は無い。
「今からコイツと飯食いに行くんだけどよ、お前も来るか?」
そのままの表情で問われて、帝人は門田を振り返った。2人で行くつもりだったところに、高校生が割り込んでもいいのだろうか。
「あ、……………ああ。一緒に行こうぜ、おごってやるよ」
「いえ、さすがにそれは申し訳ないので、あまり高くないとこでお願いします」
懐事情は苦しくはないが、さすがに露西亜寿司は厳しい。そう言うと、今度は静雄がおごってやると言い出して、帝人はどう断ろうかと道すがら頭を悩ませ続けた。






数日後、『平和島静雄が高校生とペットショップの前で同棲の打ち合わせをしていた』という噂を聞きつけた親友と上司に、2人がキレたり驚いたりするのは、また別の話である。



作品名:駅近築浅ペット付き? 作家名:坊。