昼下がりの魔法使い達は
「頼もぉぉお!」
広く暗く静かな紅魔館図書館に野太い声が響いたのは、ある晴れた昼下がりのことである。
ノックなんて概念のないとある野生の魔法使いは、まるで暖簾のように両手で大きな重い扉を叩き開けた。
図書館というのは基本的に広く暗く静かなところなのだが、この紅魔館図書館はそれが際立っているのだ。
――相変わらず図書館図書館してる図書館だな。
今頃体を本に埋めているであろうこの図書館の主を浮かべると、桂の心にほんのり甘い風が流れる。
――来た…!
扉の開く音に総悟は体をびくっと揺らし、それから両手がすっぽり塞がる大きさの魔導書に、避難訓練でもしてるかのように顔を隠した。
「チッ、山崎の野郎…使えねェな。」
伏し目がちに左右を確認するも頼りの部下の姿はなく、総悟は持っている本に爪を食い込ませた。
「最近の魔法使いは客をもてなす術も心得ていないとは…」
わざとらしい溜息を図書館に響かせながら歩く桂の足に躊躇いはない。
本を読んで無視をしている、ふりの総悟のいる方へと一直線に進み、顔が本になっている総悟の前で止まれば、腕を組み見下ろし口を開いた。
「フハハハハ!貴様がそこにいるのは百も承知だ!」
得意気な桂の高笑いに、総悟は体を左に30度だけずらしてやる。
「アンタが客だったら、俺は鼠までもてなさなきゃならなくならァ。」
「鼠じゃない、桂だ。茶はまだか、沖田総悟。」
毎度のこと嫌味が通じない桂に、総悟は目だけ向けてやり、唇を尖らせた。
「泥棒に茶をやるほど俺の心は広くねェや。」
30度が45度になった総悟のせいで、この魔導書にはきっと爪痕が残ってしまうだろう。
広く暗く静かな紅魔館図書館に野太い声が響いたのは、ある晴れた昼下がりのことである。
ノックなんて概念のないとある野生の魔法使いは、まるで暖簾のように両手で大きな重い扉を叩き開けた。
図書館というのは基本的に広く暗く静かなところなのだが、この紅魔館図書館はそれが際立っているのだ。
――相変わらず図書館図書館してる図書館だな。
今頃体を本に埋めているであろうこの図書館の主を浮かべると、桂の心にほんのり甘い風が流れる。
――来た…!
扉の開く音に総悟は体をびくっと揺らし、それから両手がすっぽり塞がる大きさの魔導書に、避難訓練でもしてるかのように顔を隠した。
「チッ、山崎の野郎…使えねェな。」
伏し目がちに左右を確認するも頼りの部下の姿はなく、総悟は持っている本に爪を食い込ませた。
「最近の魔法使いは客をもてなす術も心得ていないとは…」
わざとらしい溜息を図書館に響かせながら歩く桂の足に躊躇いはない。
本を読んで無視をしている、ふりの総悟のいる方へと一直線に進み、顔が本になっている総悟の前で止まれば、腕を組み見下ろし口を開いた。
「フハハハハ!貴様がそこにいるのは百も承知だ!」
得意気な桂の高笑いに、総悟は体を左に30度だけずらしてやる。
「アンタが客だったら、俺は鼠までもてなさなきゃならなくならァ。」
「鼠じゃない、桂だ。茶はまだか、沖田総悟。」
毎度のこと嫌味が通じない桂に、総悟は目だけ向けてやり、唇を尖らせた。
「泥棒に茶をやるほど俺の心は広くねェや。」
30度が45度になった総悟のせいで、この魔導書にはきっと爪痕が残ってしまうだろう。
作品名:昼下がりの魔法使い達は 作家名:ちんぷるんこ