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いいわけ分割ディープキス

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タクトの背中にじんわり汗がにじむ。

さっきまで適温だった布団の中は、異常に温度が上がっている。
指先まで血管が開いて熱かった。
緊張のせいで心拍数があがり、呼吸は自然と乱れた。
なんとか落ち着かせようと、タクトは長く深く呼吸した。

「す・・・・・・。」

はあぁー。
とタクトは静かに息を吐いた。声がうわずってその名は上手く出て来ない。

「あの、スガタ、さん?」

今度はちゃんと言えた、声のニュアンスもばっちりだ。
いつも通りの僕。
とタクトは自分を落ち着かす。

「ん・・んぅ?」
首の後ろあたりからゆったりとして聞こえた、スガタの声がおかしい。
一度も聞いたことのないそれは柔らかく、甘い。
タクトは妙に色めき立った。

「あの、この状況は〜・・・普通?かな?」
違うよね!?
と心の中で付け加えた。

タクトの胸の上にさりげなく這わされた手がほんの少し動いた。
騒音を立てている心臓の様子はとっくに悟られているだろう。
「何?意識してるの?」

この人はーー!!!
タクトは心の中で叫んだ。
泊まって行けば、と言われたのが嬉しかった。
ここ数日険悪だった関係も、ようやくわだかまりがなくなった。
タクトはやっと本当の友達になれた気がしていた。

僕が変なの?これって普通のお泊まりの構図?

無駄に広いシンドウ家だけに、客室か何かを貸し出されるのかと思った。
この島に流れ着いた時だって、立派な一人部屋で目覚めたのだ。
しかし今はスガタのベットの中にいる。
というか招かれたのがスガタの部屋だったなんて、スガタがくるまで全く知らされていなかった。
しかし他の無機質な部屋に比べ妙に生活感を感じたので、スガタが時々使う別室程度の割当だろうと想像した。
いやしかし・・・。とタクトは思い出していた。
「先に休んでて。」・・・って言ってた!!
妙な気はしたが、そのままの意とお休みの意だと受け取り直した。
まさかベットの中へスガタがやってくるなんて、タクトは思ってもみなかったのだ。

添い寝って普通、高校生男子のお泊まりで、あり?それに。

それに、スガタの密着の仕方である。
スガタの左腕がするすると胸をなで、タクトの脇腹をグっと抱いた。

「か、勘弁してよ・・・!からかってるの?!」

窓を向いて眠りに落ちようとしていたタクトの後ろから、抱きかかえるようにスガタが横になっている。
右手はいつの間にか腕枕状態である。
スガタの胸がタクトの背中にぴったり重なって、異常な熱を発している。
16歳で上質な筋肉を持つの二人では、春も過ぎようとするこの時期に添い寝は暑苦しいものがある。

「からかってないよ。」
そういうとスガタは、タクトの肩に顔を埋めた。
それはシンドウスガタにあるまじき行為に思えた。
ずっと張りつめていたものの、糸が切れてしまったようだった。
変だとか、どうかしたのとか、
そんな言葉をかけてはならない気がした。
それは無言に、すがっているようだったから。
タクトは背後のスガタの頭を、腕を伸ばして抱えた。
心臓の爆音は未だ収まらないが。

「スガタってさあ、色んなもん背負いすぎてるんじゃないの?」
少し間があって、スガタがうずめた顔を少し起こした。

「半分持ってあげるよ。ワコの分だけね。」

タクトがそう言うと、スガタは体を起こしタクトを見下ろした。
両手でタクトの上半身を跨ぐような形になり、タクトがスガタを見上げると、自然と体も上を向いた。
今までに見たことのない顔をしていた。
優しそうな、悲しそうな、頼りなさそうな。
その瞳を見てタクトは、スガタの黄色い瞳は狼に似ていると思った。
雪山で一人生きる狼が、本当は寂しがっているみたいだ。

スガタは無言で、タクトの上に被さって目を閉じた。
不器用なのだ、スガタは。
友人同士がどう接するのかも、きっと分からないのだろう。
甘えたいとか、頼りたいとか、でもそれをどこまで出して許されるのかとか、きっと分からない。
ずっと一人で抱えていたから。
僕だって知らない。とタクトは付け加えた。
ただ誰にも心を開かない人間が、心を許してくれているのだけは分かった。

多分これって普通の高校生男子の友情じゃないよなあ。

胸の上の、筋肉の固まりみたいな肉体は、思った以上に重たい。
スガタの青い髪に月の光が差し込んで、こっちへきて初めて名前を知った、やぐるま菊の色にそっくりだと思った。
花言葉は信頼だと、ワコが言っていたような思い違いだったような。
その髪にそっと指を通したが、それだって今のスガタ以上に普通じゃない行動だった。

このクソまじめで優秀で、頑固でプライドが高い友人が、心を許してくれたということは、こんな奇天烈な事も起こりうるということなのだ。
深呼吸しながらスガタの髪を静かに撫でた。
何か思い起こしたように、スガタはふいに頭を上げた。

「やめるな。」

自然と置いてけぼりになったタクトの手に、スガタはそう言った。
肘を伸ばしてその後頭部を再び抱えると、同じ目線でスガタがゆっくりと降りてくる。

え、これって、え?

鳴りっぱなしの胸騒ぎは拍車をかけた。
タクトの手はスガタの頭に添えられているので、まるで容認する形になっている。
泳ぎまくるタクトの瞳を間近に見据えてスガタが言った。

「タクトにワコのことを任せるのは不安すぎる。」

そう言って目を閉じ、また一寸近寄った。
タクトがはっと息を飲む。
唇が触れる寸前。再び間を置いて、かすれた声で囁いた。

「僕の分を持ってくれ。」

そう言って。
間髪入れずにその舌をタクトの口内に押し込んだ。



う・・・・・・・・・わあぁ・・・・・・・・・。


しばらくタクトの思考は感嘆詞で埋め尽くされた。
タクトが思考停止している間も、スガタは貪るように角度を変えタイミングを変え、タクトに口づけを続けている。
どうしていいかわからず、ともかくされるがままのタクトも、特に抵抗はしなかった。
右手はスガタの頭に添えられたまま。

女の子ともこんなことしたことないのに・・・。

タクトの中でそんな思いがよぎったが、それが大して残念でないことまでは分析できなかった。
あまりにキスが長いのと、息苦しいのと、気持ちいいのとで、タクトは歯がゆくなった。
目を薄めて開けると、端正な顔が無心に自分に口づけていた。
その瞬間悦楽が、タクトの心を支配した。
スガタの頭に添えられた指にくっと力が入る。
スガタが息継ぎに顔を逸らすと、吸い寄せられるようにタクトはそれを追った。
今まで頭の中にあった、体裁とか、常識とか、友情とか重荷とか、そんな言葉はすべて吹き飛んでいた。

左手はいつの間にか、スガタの背中に回っていた。
枕に深く埋もれるほど、スガタが力強くキスをした。
タクトはそれに答えていた。ただスガタのキスに溺れていた。
ディープキスは初めてする行為だったが、やり方なんて知らなくとも自然とできた。
変な声が何度か漏れたがどうでもいい。
時より目を開けるとスガタがこちらを見ている時があり、羞恥心を煽ったがそれも妙に興奮した。