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そして僕は一人になった

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パッとコートから手を離す。離す直前の綱吉の顔が今にも泣きそうで、骸の心が掻き乱さられる。乱し、濁していたのは自分の方ばかりで、骸は戸惑った。闇の先の光の中から、手を差し伸べられているような心地がする。「・・・いえ」
骸は短くそう告げ、急ぎ足でその場を立ち去った。差し出された手をずっと離さずにいることなど出来ないと思った。ならば、手を振り払って自分から隔離させる方がいいのだ。そうすればこれ以上掻き乱し、濁すこともない。それでよかった。
ふと骸が視線を上げると、自室の窓からは炎が粉を上げて燃えているように輝く月が見えた。

そして間もなく、綱吉はいなくなり、真っ暗な闇の中で骸は一人になった。瞼の裏には、あの夜見た眩いばかりの月だけが焼き付いていた。