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そして僕は一人になった

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「い、いや、そういう意味じゃなくて・・・つ、月が綺麗だったし・・・骸が早く帰ってきそうだなあって思って・・・」
言葉が紡がれていくにつれて、段々と綱吉が小声になってくる。綱吉は恥ずかしくて目が合わせられなかった。あまりにも一方的すぎて嫌われると思った。骸が以前よりも態度が優しくなったことは分かる。でも、それは綱吉が骸に抱いている物とは違う気がしたし、何よりお互いのバックグラウンドからして無理な気がしていた。
「クフフ、ま、まあこのくらいの任務はどうということはないですよ。君も少しは僕の力が分かってきたみたいじゃないですか」
骸は腕を組みながら視線をそらしつつ言う。お互いに目が合わせられなかった。
「う、うん、そうだね・・・そ、それよりさ、ほら、月!綺麗だと思わない?」
その場の空気が何だか気恥ずかしくて、綱吉は窓の外の月を指差す。指を差した先では、濃紺の夜空に煌々と輝く月がよく映えていた。骸はふっと口元に皮肉めいた笑みを浮かべた。
「クフフ、君にしてはなかなか風情のあることを言いますね。あまり関心がないように見えたのですが」
骸は目を少し細めて天に浮かぶ月を見る。決して同じことを思っていたとは口に出さなかった。同じ感覚を持っていることが嘘のように思えてしまう。進んできた道が違いすぎる。今ここにいることが一瞬の袖の触れ合いの気がしてしょうがなかった。こんなにも満たされた日々も夢のように消えてしまう気さえした。
「うっ・・・た、確かに普段はそんなに見ないけどさ・・・今日はたまたま見てて」
月を眺めながら綱吉は呟く。たまたま、というよりかは骸を待っている間することがなかったというだけだった。でも、それを口にすることはなんとなく躊躇われた。
「・・・そうですか」
そう言うなり、骸は早急にこの場を去ろうと足を踏み出した。どうせ何も言えやしない。言っても通じないのなら、二人きりでいるのはただただつらいだけだった。見込みのないものは切り捨てた方がいい。だが、次の一歩を踏み出そうとした瞬間、骸の黒コートが掴まれて動けなくなった。振り返ると、綱吉の小さな手がかすかに震えながらもコートの裾を掴んでいた。
「・・・あ、ご、ごめん・・・!」