レイニーデイ、インザワールド
ちらりと窓の向こうを見やると、雨がさっきよりも激しくなっていた。薄暗い闇の中を細い雨糸が落ちていく。耳を澄ませば、電話越しに雨音が聞こえた。
「あ、あのさ、もしかしてそっちも雨なの?」
綱吉にそう尋ねられて、骸は電話ボックス越しに外を見る。闇の中を走る車のライトが散り散りに光っているのを濡れたアスファルトが写し出していた。
「ええ、かなり降ってますけど、そちらは?」
「うん、結構降ってる」
骸が今どこで電話をしているのかは知らないが、同じように雨が降るのを見ているのだと思うと、世界の繋がりが感じられた。骸のいる世界に自分が繋がっている。そんな心地がして、嬉しくなった。
「ねえ、骸」
「何ですか?」
「この前は、その、ごめん。急に出ていったりして。本当、ごめん」
雨は降る。降り続ける。小さな飛沫をつくっては水と化す雨の音が世界を繋ぎ、ずっと言わなければいけなかったことを言わせてくれた。離れていたって、何もなくなったわけじゃない。
「・・・随分、素直ですね」
「あ、あのなあ・・・お前、人が真剣に謝ってんのに―」
「冗談ですよ。・・・まあ、せいぜいしぶとく生きてて下さい。そのうち、会いに行きますから」
綱吉の頬が少し赤くなる。そのうち、なんて卑怯だ。1日1日を迎える度に、今か今かと待ちわびてしまう。
「・・・う、うん。が、頑張ります」
しどろもどろにそう答える。でも、もう電話が切れても不安にはならないでいられる気がしていた。
作品名:レイニーデイ、インザワールド 作家名:豚なすび