レイニーデイ、インザワールド
骸がクローム達を置いていってから3ヶ月が過ぎた。綱吉は仕事でイギリスまで出向いていた。イギリスは雨の街だと言われている通り、確かに頻繁に曇天が街を覆い、雨を降らしている。会談というのは毎度毎度疲れるもので、飲み食いしながら他愛ない話を交えつつ、ファミリーの今後について話さなければいけない。幸い、こういう仕事の時にいつも同伴してくれる山本のおかげで随分スムースに話が進んだ。ネクタイを緩めつつ、綱吉は窓の外の雨を見ながらため息をついた。自分一人でもこなせるようにしなければ。これはいつもリボーンにも言われていることだった。もう少し上手く他愛もない話を出来るようにして、笑っておいた方がいいところではとりあえず笑う。しかも食べながらやらなければいけない。練習も何度かしたことがあるし、実際そこそこの数をやってきたつもりだが、ちょっと気を許せば一気に崩れることは分かりきっていた。
「結構骸にもけちょんけちょんに言われたんだけどなあ・・・」
紅茶を入れながら、独り言を反芻してみてはっとした。六道骸。六道輪廻を回った記憶を刻み込んだ、目に突き刺さるような鋭く赤い光を放つ目を持ったあの男は今一体何処にいるのだろうか。過去の何もかもが懐かしかった。マフィア嫌いのくせにテーブルマナーはなぜかしっかり知っていて、リボーンの代わりに見てもらっていたのだ。指摘の細かさはリボーンに負けていないと思う。「・・・でも、協力は多分してくれてるんだよな」
クロームが骸に連絡をとっているのは知ってるし、時折差出人不明のデータがボンゴレに送られてくるのだ。しかも、それはかなり機密の物だったり、ボンゴレにとって有益なものだ。超直感もそう告げているし、クロームもこの差出人は骸だと証言している。紅茶を机に置いて、携帯電話を手に取ろうてした瞬間、机の上で大きく振動し出した。
「えっ、あ、は、はいいい!?」
「・・・何ですか、そんな素っ頓狂な声を出して。いい加減ボスの自覚を持たないと僕に乗っ取られますよ、そのうち」
「んなっ、何ですか!乗っ取るなんていきなり・・・ってそういやそんなこと言うのは骸しかいないような・・・」綱吉が電話越しに呟いていると、くつくつと骸が喉を鳴らして笑っていた。
「クフフ、やはり面白いですね、君。お久しぶりです」
「・・・うん、久しぶり」
作品名:レイニーデイ、インザワールド 作家名:豚なすび