エンドレスラブソング@12/13完結
「・・・・静雄さん、痛いです。ちょっとだけ力緩めてください。あと、もう良い大人なんだから泣かないでくださいよぉ」
「うるせぇ。今ぐらい、俺の好きにさせろ。あと泣いてねぇし」
「もう、意固地なんだから。・・・でもしょうがないですね、わかりました、この際いっぱい泣いちゃってください。どうせ、皆の前でも、一人でいても、泣けなかったんでしょう?本当は泣き虫の静雄さん」
「・・・だから泣いてねぇよ」
「鼻声ですけど」
「うるさい」
ぐぐぐと力を入れれば、「痛い痛い!」と大して痛くなさそうに腕の中のボーカロイドは言う。
それが少しおかしくて静雄は笑った。その時鼻を啜るのを忘れない。
「やっぱり泣いてるじゃないですか」
「泣いてねぇよ」
頑固者。お前に言われたくねぇ。
軽い掛け合いが愛しくてたまらない。
数分前の自分はどんな気持ちでどう過ごしていたのすら、頭の中からはもう消えていた。
「帝人」
「はい」
「お前、壊れたんだよな」
「・・・はい、機械にとって死を意味する全ての『機能停止』を、貴方の目の前で」
「でもお前はここにいる」
「はい、います」
静雄の願う応えを、導き出してくれる声。
ああもう今はそれだけで、
「何でお前が、こうして俺のところに戻ってきてくれたのか、わかんねぇけど、」
帝人は腕の中で無理をして手を伸ばし、その金色の頭を柔らかく撫ぜる。
「僕がここにいるのは、皆が貴方を愛していた結果ですよ」
「・・・愛されてんのはお前だろ」
「ふふ、じゃあふたり共愛されてたってことで」
嬉しそうに、面映ゆそうに笑うボーカロイドをまたぎゅっと抱きしめる。
今度は抵抗することなく、腕の中に納まる身体に静雄はまた泣きたくなった。
「くわしいことは後でいいから、・・・今は、このままでいさせてくれ」
「静雄さんの気が済むまでどうぞ。僕はずっとそばにいますから」
「・・・・・ん」
撫ぜる掌が心地よく、ふわりと意識が揺らぐのを感じた。
寝たくない。もっと彼を抱きしめて、彼の声を聴いて、彼の姿を見ていたい。
「静雄さん、眠いですか?」
「・・・別に」
「眠いなら、寝てもいいですよ。そうだ、子守唄を唄いましょうか?」
静雄はこくりと頷き、彼を抱きしめたまま、ベットへと倒れ込む。
瞼をゆっくりと閉じる。
その間も小さな手が髪を優しく撫ぜていた。
「みかど」
呼ぶ声に、はいと応えるボーカロイド。
静雄は噛み締めるように呟いた。
「俺、お前の唄が、すげぇ好きだ」
「・・・っ、」
息を呑む音に静雄は薄眼を開ける。
帝人は大きな眸を揺らがせ、切なげにそして愛おしそうに静雄へと微笑んだ。
「―――ありがとうございます、静雄さん」
蒼い眸から零れ落ちた滴を見て、静雄は衝動的に腕の中で見上げる顔を引き寄せた。
重なる視線。眸に映る自分の姿を確認してから、視界を閉じる。
(唄わせてください)
唄ってくれ。
(貴方への唄を)
俺のための唄を。
触れた唇から愛の唄が零れた。
END
作品名:エンドレスラブソング@12/13完結 作家名:いの