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エンドレスラブソング@12/13完結

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ベットに寄りかかり、床にそのまま座り込んで何かをするでもなく、ただ視線の先にある空間を見据える。
下手したら数十分、数時間ずっとこの態勢の時もあった。
何かをする気力すら起きないのだ。
与えられた仕事は自分なりにこなしていたつもりだったけれど、今は先輩であり上司でもあるトムに休めと言われ、静雄は一日を部屋に引きこもったまま過ごしていた。
(ひでぇ面してるぞ)
からかうでもなく、真剣に言われ、静雄は自分の顔に手を当ててみるが見えるわけもなく、そんな静雄をトムはどこか不憫そうに見つめていた。
そんなに酷い顔をしているのだろうか。
確かに、食欲も無いし、寝てるのかぼうっとしてるのかわからない夜を過ごしているが、自分ではあまりきついとか、辛いとか、そういうのは感じず、ただ、本当に、何もする気が起きないというか、何かを感じたり想ったりする心が麻痺しているような、そんな感じだった。
他人から見ればそれがとても異常に見えるということを静雄は知らない。
知っていたとしても、静雄にはどうでもいいことだった。
帝人のこと以外を、静雄は考えたくなかったのだ。


(僕の唄、聴いてくれますか)


あの日、あの時、自分が聴きたいと言わなければ、まだここに、自分の隣に帝人は居ただろうか。
そう思うと、静雄はあの時の自分を殺したくなるけれど、それでも、またあの時に戻って同じように問われれば、きっと自分は聴きたいと言ってしまうのだろうとも思った。
帝人が静雄の願いを叶えようとしてくれたと同じように、静雄もまた、唄いたいという帝人の想いを叶えてやりたかった。
そうして喜ぶボーカロイドの顔を見たかった。
ぐしゃりと乱れた髪を掴む。喉の奥が酷く灼けたように痛んだ。
結局、自分のエゴで帝人を壊したのだ。
静雄自身が、誰よりも愛したボーカロイドを。
きっと帝人は貴方のせいじゃないと笑って言うかもしれないが、それでも静雄は自分が許せない。
責めて責めて責めて責めて、そうしてたったひとりだけを、想って。
静雄は愛したボーカロイドのいない時間を拒絶した。


(大切なひとを)


いらねぇよ、そんなもん。
お前がいればいい、お前が傍にいてくれりゃあ俺には充分だった。
俺の幸せは初めて会った時から全部全部お前が作ってくれてたんだ。
今更お前を失くして、どう幸せになればいいか、俺にはわかんねぇんだよ。
お前のせいだ。
お前が甘やかして、俺を、俺だけを愛したから、俺はこんなめんどくせぇ人間になったんだ。
なあ、責任取れよ。
責任取って、俺の傍に居ろよ。
――――いてくれよ、「帝人」





「はい」





ぱりんと、凝り固まった何かが割れる音がした。





「静雄さんはほんとーに世話のやける子ですね」
困ったようにあどけなく笑う顔は記憶にあるものと変わらない、けれど泡沫のように消えない、今ここに在るもので。
「・・・みかど」
「はい、帝人です。貴方のボーカロイドです」
「みかど」
「大丈夫です。そんな声で呼ばなくても、もう消えませんし、いきなり壊れたりしませんから」
投げ出された腕を持ち上げ、目の前で微笑む姿に手を伸ばす。
その手が受け止められた時、静雄の目からじわりじわりと色が蘇る。
時間が、動きだす。
「――――帝人」
「はい、・・・・ただいま、静雄さん」
応える声も、応える君も、今ここに、在るのだ。
「―――――ッ」




衝動で腕の中へその小さな身体を引き寄せ、抱きしめても、消えない事実に目の奥が熱くなった。