【東方】東方遊神記14
「ふ~ん・・・面倒さえ起こさなければ、あたしは何も言わないわ。でもくれぐれも行った先の奴らとトラブルは起こさないでよ。それ全部あたしの所に回ってくるんだから」
「言われるまでもない。・・・ところで、こんな寒い中、なんでまた外にいたんだい?見た感じ、真面目に掃除しているようにも見えないし」
・・・お~い。手早く済ませるんじゃなかったのか~。二時間コースになっちまうよ~。
「・・・魔理沙たちが中で馬鹿騒ぎしてるのよ」
霊夢は大きく溜息をつくと、恨めしそうに神社の方を振り返った。耳を澄ましてみると、確かに誰かが大笑いしているような声が聞こえてくる。
「相変わらずここはたまり場になってるんだね。見つかって巻き込まれてもかなわないから、ここらへんで失礼するよ」
ホッ・・・。よかった。さすがに覚えていた・・・よな?
「はいはい、わかったからとっとと帰った帰った。あたしだってこれ以上騒がしくなるなんて御免だわ」
そう言うと、霊夢は犬猫を追い払うかのようにしっしっと手を振った。神様相手に。
「あれ~、霊夢がいないぞ~。どこだ~レ~イム~」「おしゃけだ~おしゃけが足りにゃいぞ~アッハッハ~!」
むこうも出てくる気配を見せ始めた。
「まったくあの呑ん兵衛【のんべえ】どもは・・・ほらっ、速く行かないと本当に巻き込まれるわよ」
「あぁ。それじゃ邪魔したね。あんたたちもいつまで抱き合ってんだい」
「えへへ~青ちゃんあったか~い」
「うふふ・・・ほっぺたプニプニです・・・」
「・・・もう好きにしてくれ・・・」
二人に挟まれていじられ続けた青蛙神は、もう何でこんな状況になったかなんてどうでもいいといった感じにぬいぐるみのようになっていた。ここでは平仮名ね。
「・・・間違いなくあたしと青は苦労人体質だね」
そう一人納得して、神奈子はまた皆を荷台に乗せ、霊夢に手で軽く挨拶すると、またミサイルよろしく物凄い勢いで飛んでいった。それから少し遅れて魔理沙と、一緒に酒を飲んでいた萃香が霊夢のいる境内に出てきた。この二人について、簡単に説明すると、
魔理沙は本名(要名)「霧雨 魔理沙【きりさめ まりさ】」。前述した霊夢の相棒的存在、白黒の魔法使い、人間だ。
萃香は本名(要名)「伊吹 萃香【いぶき すいか】」。大酒飲みの鬼である。一口に鬼と言っても、幻想郷に巣食う鬼種は、純粋な戦闘力でいったらあの紫をも凌ぐものを持っている。しかし単純で馬鹿正直なため、戦闘技術はあまり持ち合わせていない。萃香の外見は青蛙神と同じくらいの女の子である。
「うぉっ!寒い!これはヤバイ!霊夢も何でこんな寒いのに外にいるんだよ。誰か来てたのか?」
「えっ?なになに?誰か来てたの?お酒も一緒?」「うるさい馬鹿ども。速く部屋ん中入れ。私も飲む」
先程までの話を魔理沙にしようものなら、面白がって勝手に行動し出すに違いない。霊夢は今回の件は魔理沙には話さないことにした。話さなくても、いずれすぐに伝わるだろう。
「・・・どう考えても、嫌な予感しかしない・・・」
どうせまた面倒事が起こるんだろうなぁと、半ば諦めながら霊夢は部屋に入っていった。
作品名:【東方】東方遊神記14 作家名:マルナ・シアス