遠い夏の終わり・1
少年が寒さに身震いした。プロイセンは羽織ったマントを脱ぎ、それで腕の中の少年を包み込んだ。
利用出来るものは、何でも利用するだけだ。胸の内でそう呟きながら。
「お前、このまま俺様のところに来い。暖かいスープに毛布もあるぞ」
抱き抱える腕に力を込める。少年が抱き付く力を強めた。
「スープ…?」
「ああ、美味いぜ」
「美味い…のか?」
「食ってみりゃ分かるって。それからな、今日から、この俺様がお前がでかくなるまで保護者をやってやるぜ」
「……!」
最後の言葉だけは理解したらしい少年は、初めて満面の笑顔を作ってみせた。まるで、その言葉を待っていたとでもいうように。
初めて見た笑顔に、プロイセンも思わずテンションが上がる。覚悟など大仰なものを忘れる勢いだった。
「何だよ、ちくしょう。可愛いじゃねぇか…」
――時代の波に呑まれるのは自分か、このドイツか。
そんな思いが脳裏を掠めるが、しかし、腕の中の小さな存在をその温もりを確かめたいとでもいうように、もう一度、抱き抱える腕にそっと力を込めた。