コンビニより愛をこめて
「俺、勘違いすることにします」
宣戦布告の様なその台詞に俺は呆然と立ち尽くす。静緒はそんな駄目な男を尻目に、赤く染まった顔を隠すように走り出した。彼女の後姿が小さくなるに連れて、先ほどの言葉が一層大きく頭の中で反響する。
笑っていた彼女は、とても美しい女の顔をしていた。
…勘違いじゃねぇよ
一言零して、項垂れるように頭を抱えてしゃがみ込む。静緒がこの場にいないのが幸いだった。いつも余裕面している先輩が、年甲斐も無く耳まで真っ赤になっている姿なんて格好悪すぎる。
「ったく、久々に張り切ってみますか…」
立ち上がり呼吸を整えるように深呼吸する。体の中に流れ込む外気で頭を冷やすと、静緒に続いて走り出した。
全力で走れば、自宅に着くまでには追いつくだろう
きっと赤くなった顔も走った所為にできる
追いついたらどうしてやろうか…
そうだな、追いついたら力の限り抱きしめて
この思いを言葉にしよう
お前の事が
世界で一番、好きだから
作品名:コンビニより愛をこめて 作家名:伊達