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ふざけんなぁ!! 3

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9.不幸は続くよ、どこまでも♪ 後編4




「はーい帝人ちゃん。ちょっとチクッとするからね~♪」
「うううううう」

目をぎゅっと瞑って、左腕をぶるぶると震わせつつ差し出すと、新羅はにこにこといい笑顔を浮かべながら、帝人の肩にアルコールの脱脂綿を擦りつけた後、遠慮なく銀色の針をつきたてた。

即効性を期待しての解熱鎮痛作用の注射だが、ずもずもと液が体内に入ってくる感じは気持ち悪いし、それに痛い。
渡草が運転するバンに乗り、皆で新羅のマンションに辿り着いた頃、彼女の体温は、ほぼ38度を超えていた。

今彼女は静雄の胡坐の上にちょこんと乗せられ、背後からがしりと腕を回されたティディベア抱きにされている。
正に雁字搦めで身動き一つ難しい有様で、擦り剥いた膝小僧や、肘等の怪我の手当てもし辛いし、今の体調を考えれば、とっとと和室にある客用布団に寝かせて貰いたい所なのに。
やっと取り戻せた彼女を、もう手放すまいと静雄がひっついている為不可能だ。

「………ノミ蟲め、殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス………」


耳元で延々呪詛を呟やかれるのは正直ウザいが、帝人自身もただ今混乱中で、もうホントに、今後どうしようかと、頭がマジで痛すぎる。

原因は、渡草のバンの中で田中トム氏が披露した、彼の携帯だった。
露西亜寿司の中で録画された映像は兎も角、音が悪いけれど、はっきり聞こえてきた折原臨也と新羅のやりとりの会話が、一瞬で帝人を恐怖のどん底に、静雄を怒りのマグマの中へと叩き込んだのだ。

《でも、同棲している証拠写真を何枚か抑えてあるし、いつでも郵送はできる状態で纏まっている。
今日学校帰りに帝人ちゃんをとっ捕まえて資料見せたらさ、静ちゃんの家を出て俺の所に来るって条件を、速攻で呑んでくれたよ。
あー可愛かったぁ♪ 涙滲ませた目がさ、こうぎらぎらっと俺を睨みつけてきて。
あーいう反抗的な子、踏みつけて弄って痛めつけて犯して、身も心もボロクズにして捨ててやったら気持ちイイだろうねぇ♪》

《当たり前だろ。あの娘は俺がずっと前から目をつけてたのにさ。二年もこの俺が大事に大事に育ててきたのに、東京にのこのこ出てきた初日に静ちゃんなんかにまんまと嵌りやがって。マジ【可愛さ余って憎さ100倍】。俺、静ちゃんのお古なんてゴメンだもん。壊したい、殺したい、あーもう死んでくれないかなあの二人、マジで》


この人、何言ってくれちゃってるのぉぉぉぉぉぉぉ!!


大体、自分は臨也に育てられた覚えなんてない。
ただ、ネット上に架空組織……、ダラーズを作って遊んでいた頃から、鬱陶しいアタック合戦を仕掛けられて、それを悉(ことごと)く撃退し、完膚なきまで叩き潰していただけだ。
恩着せがましい上、誇大妄想も甚だしい。


パソコンを壊し、情報を盗む目的で、彼の所にアルバイトに行っても良いかな……、などと、思った夕方の自分自身に、蹴りを入れたい気分だ。
行ったが最後、きっと犯され、最中の映像も撮られ、脅されるネタが増えただけだろうし。
彼とは今後一切、断固関りたくない。

「まぁ、臨也は本当に危ない奴だから、軽はずみに近寄っちゃ駄目だからな? 静雄は臨也の天敵だし、お前は彼氏にしっかり守って貰え」

兄貴肌の門田さんが、渋い顔をしつつも、帝人にそう忠告をくれるが、誰が彼氏だ!!
途端、照れ屋な魔人も、きゅううっと、帝人の体に回された腕に力を込めやがり、コルセットで守られた彼女の修復中な骨が、激痛とともに軋みだす。

「……ギブ、ギブギブギブギブギブ、静雄さん緩めて……、痛いです……」
「あ、悪ぃ!!」

直ぐに優しく、こわごわと抱きしめなおしてくれる。

とても優しいし、いい人なのは認める。
好意を寄せてくれるのも嬉しいし、彼の情けない所とか、純情一途さとかも、可愛くて大好きだけど。
これ以上、この人と一緒に暮らせば、己の怪我を更に悪化させかねない。

入院すれば、間違いなく親にばれる。
そしたら埼玉の実家へと、強制連行も覚悟しなければならない。
何の為に東京の池袋に出てきたのか。
目的は傷ついた正臣と再会し、共にダラーズの終焉を見届ける為だった筈なのに。


(……やっぱり、このままじゃ駄目だよね……)

もうこの人とは暮らせないのだ。
そう思うと、寂しさにじわりと涙が滲んでくるが、唇を噛み締めて堪え抜いた。
ああ、やっぱり絆されてしまった。
平和島静雄が、今とても愛しいと思う。
今泣いたらズルすぎるし、感情に流される前に、きちんと彼に言っておきたい。


「静雄さん、私ね、お世話になりましたが近いうちに引っ越しします」
そうぽつりと上擦り声で帝人が呟いた途端、部屋の温度が確実に五度は下がった。


★☆★☆★


『帝人ぉぉぉぉぉぉぉ!! 考え直せぇぇぇぇぇぇぇ!!』

命令口調で綴られたPDAを、首なしライダーが突きつけてくる。
「そうだよ、帝人ちゃん!! 静雄が可哀想じゃないか!!」
新羅はいつでもセルティの味方だから、彼の言う事はあまり信用できない。

元気な二人に攻められている間、再びおかしくなった静雄は、「ミカドミカドミカドミカド」と延々呟きながら、ぎゅうぎゅうに彼女を抱き締め出す。
万力並みな彼の腕のお陰で、帝人はもう声を出すどころか息も吸えない有様で、仔猫を守る母猫状態の紀田が、「離しやがれ馬鹿野郎!!」と、静雄の背中にどかどかと蹴りを浴びせ続けている。
その振動もまた辛い。
帝人の命は、正に風前の灯だ。

「……どんなカオスだよ……」
はふっと溜息をついた苦労人その1……、田中トムがやんわりと、静雄の腕を軽く抑えた。

「静雄、もう少し腕を緩めてやんな。でないと帝人ちゃん、本当に窒息死しちゃうぞ」
ありがとう。よくぞ言ってくれました!!
ドレッドヘアの彼の上司は、この瞬間帝人にとって命の恩人となった。

新鮮な空気を吸い込んだ途端、けほけほと咽こみ、胸の痛さにまたまた涙がじわりとにじみ出す。

そしたら今度は、苦労人その2……、門田京平が、ぽしぽしと帝人の頭を撫で、「静雄だって分からず屋じゃない。一方的に宣告する前に、一度きちんと話し合った方がいいんじゃねーのか? 恋人同士だろう?」と。

そんなありがたくも、勘違い甚だしい仲裁を買って出てくれた。
マジでもう泣けるぞ。
帝人はじわりとこみ上げてきた涙を、手のひらでごしごしに擦って隠す。

どうして皆、寄ってたかって、自分を静雄の恋人だと、断言するのだろう?
今日の事件で、彼に本当に好かれていると判ったし、自分も彼が愛しいし、このまま流されていってもいいかなって、思っちゃっいつつあるけど、誰だって譲れない夢がある。

これでも、自分はまだ15歳の乙女である。
恋愛をするのなら、最初からきちんと段階を踏んで欲しいなと、思っても良い筈だ。
帝人はうな垂れ、一言彼に物申してみた。

「門田さん、恋人云々を言う前に、大体私、まだ静雄さんに、交際すら申し込まれていないんですが」
「は?」
大きな目がまん丸になって、自分を凝視しているが、知るか。


「私って一体、静雄さんにとって、どういう存在なんでしょうかねぇ? 不安なんですよ、これでも」


溜息をつきつつ呟いた途端、ぴしりっと再び空気が凍りついた。
作品名:ふざけんなぁ!! 3 作家名:みかる