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ふざけんなぁ!! 3

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中でも首が無い筈のセルティが一番、冷たい視線を静雄に送っている。

「うんうん、帝人ちゃんだって拗ねたくなるわよねぇ。女の子はちゃんと、口に出して言って欲しいものだもんねぇ♪」
「静雄、お前そりゃ全然駄目だろ? この二ヶ月間、何してたんだ?」
狩沢の援護射撃も飛び出した上、尊敬する上司の駄目出しまで喰らい、今度は静雄がだらだらと冷や汗を流し出す。

「で、でも俺、帝人には毎日好きって、言ってるし」
「八つも年上ならさ、それなりのリードを期待したいよなぁ♪ 初めて恋人を作るんならさ、夢見る少女としては……、相手からロマンチックな告白ぐらい欲しいよな、帝人?」
「うん」

冷めた爬虫類のような侮蔑の目を向けつつ、明るい口調で正臣まで、静雄の攻撃に回っている。
帝人自身の今の気持ちは、正に幼馴染の言う通りだったので、遠慮なく頷いておいた。

哀れ静雄の顔は血の気が引いて、真っ青だ。
どうしてこの人はこんなに純粋無垢なんだろう?

彼が今まで告白ができなかったのは、ほぼ帝人が原因だ。
今日まで自分は誰とも恋愛する気になんてなかったから、嘘がつけない静雄が思いつめて、もじもじ挙動不審な動作を見せると、完膚なきまで話を逸らした上、べたべたのでろでろに彼を甘やかし、言葉を封じてきたのに。

今になって欲しかったなんて攻められるなんて、本当に彼が気の毒だと思うけれど。欲しいものは欲しいのだ。
ずるい自分で本当に申し訳ないが、乙女の夢はやっぱり捨てられない。

腕を伸ばして首に抱きつき、身をすりっと寄せておく。

「苛めてごめんなさい。でもどうしても言葉が欲しかったんです。いつか絶対に言ってくださいね。私、待ってますから……、約束ですよ、静雄さん……」
「……、う、ああ……、………」

耳に小声で囁くと、今度は顔を真っ赤にし、心臓もドキドキと早鐘を打ち鳴らし出す。
それでも、こくりと頭が上下に動いてくれたので、帝人の胸もほんわり暖かくなった。

「おーい帝人、胸焼けしそうな世界を作ってる最中に、空気読まなくて悪いんだけどさぁ、お前これからどうするの? マジで引っ越すのか?」
「うん」
「帝人ぉぉぉぉぉぉ!! イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ……」

再び、駄々をこねだした静雄が、ぎゅうううううっと帝人を抱え込んだ腕に、力を入れやがった。
彼女の体に巻かれたコルセットが、めりめりと音を立て、断末魔の悲鳴を上げている。


「大体行き場あるのか? ウザヤの提案は蹴っ飛ばしたんだろ?」
「うー、最悪、正臣の所に暫く泊めて」
「別に俺はいいけどさ、平和島さんがその調子じゃ、納得しないだろが」
「……でも折原さんが、私と静雄さんとの同居の証拠写真をお父さん達に送ったら、もうおしまいじゃない。せめて別居してれば、後は何とでも言いくるめられるし………」


盛大に報復した事も、きっともうバレているだろうし。
あの男の性格は、一回会った程度じゃあんまりよく判らないけど、ネット上のやり口を見るからに、随分捻くれてて執念深そうだ。


「あー、俺正直、これでもうアウトだと思うけど? 異性とお付き合いなんて、親父さんこれ見たらきっと泡吹くぞ」

正臣がぺらりと突きつけたのは、忌まわしい【東京災時記】だった。
もう二度と見たくもないと思った、静雄に抱きかかえられたA4サイズの写真は、絆された今改めて見ると、とても良い記念の一枚になっていて、ちょっと嬉しかった。

「……静雄さんって、やっぱりかっこいい……」
ほうっと見惚れながら無意識に呟けば、静雄は真っ赤な顔のまま、カチンコチンにフリーズし、呆れ顔の正臣が、チョップを帝人の頭におみまいしてきやがる。

「どうしたんだそれ?」
門田の問いに、渡草が手を上げる。

「あ~、俺さっき、ペットボトルと一緒に買ったんだ。聖辺ルリちゃんの特集が少し載ってたから」


静雄と帝人のツーショット写真の出現に、セルティは『可愛いぞ、帝人♪』『静雄、お前も一生物の宝物じゃないか♪』と、一人ウキウキPDAを振り回してはしゃいでいる。

彼女は親友静雄の恋を、積極的に応援中だ。
その様子が勘に触ったのか、正臣は忌々しげに目を眇めた。


「セルティさん、浮かれてますけどね、その写真のお陰で今日の朝、帝人、登校と同時に生徒指導室に連行されていっちまったんっすよ。それで教頭と六人の男性教諭にぐるりと取り囲まれて、いきなり『来良を辞めろ』の大合唱ですよ」

『「「「「「え?」」」」」」』

「いきなり乱暴だな」
「どうしてまた」
「こいつのせいです。全部こいつが悪い!!」

びしりと平和島静雄に、人差し指をつきつける。

「……ああ?……」

静雄の額に血管が浮き出したが、彼が暴れだすより帝人の方が早かった。
「静雄さんには絶対言わないでって言ったでしょ、正臣の……ぶわぁかぁぁぁぁぁぁ!!

渡草が購入した【東京災時記】は、そのまま正臣の顔面に綺麗にぶち当たった。

★☆★☆★


「は~、デートドメスティック・バイオレンスか。うんうん、今の帝人ちゃんの様子じゃ、学校側がそう判断しても、おかしくないよねぇ」

新羅が腕を組みながら頷くその横で、ドカりとセルティの地獄突きが、彼の腹に決まる。
『医者で友人なら、もっと二人の為に考えてやれ』

お怒りモードでPDAを突きつける彼女の気持ちも嬉しいが、帝人自身は実はとっくに、来良学園の教師陣に、諦めと見切りをつけていたのだ。


高校は、生徒の生活を守る所ではない。
決められたカリキュラム通り勉強を教えはするが、後は全部生徒任せ。
大学か就職かの未来を選択するまでの、いわば最後の予備校だ。

大体、帝人が入学して二ヶ月経っていて、明らかに静雄によって怪我を負っていると判っていても、今までずっと沈黙を貫いてきた現実。

それにぞっとしたのは、帝人はこのままなら一学期終了と同時に、体育の成績が自動的に1になっていたのだ。
実技は怪我のお陰でずっと見学状態が続いていたけれど、そんな説明は今まで一切聞いていなくて。

通知表は、夏休みに帰郷すれば親に見せなければならないし、そうなると自動的にバレ、帝人が自然に親元に留めさせられ、東京へ戻れなくなると、そんなずるい判断も彼らの中で動いていたから、学校は黙認していた。

「なのに、大勢の人の目に触れる雑誌に、二人の交際っていうか、帝人ちゃんのケガの原因が出てしまった訳っすね」
「そりゃ学校はもう、見て見ぬふりができないわよね」

遊馬崎と狩沢のきつい一言に、静雄の落ち込みが益々酷くなっていく。

世間の目を気にする私立高校にありがちな、あまりに学校側の都合による一方的な『お願い』。
危ない芽が育つ前に、学校も早急に対処しなきゃならなくて。
生徒指導室という密室で、しかも少女一人に、大人が七人がかりで取り囲む卑怯さ。
学校を自主的に退学してくれと、最後にはご両親を呼ぶとまで言われ、そういう運びになったのだ。


「みかプー、それってある意味脅迫じゃない」
「えげつないっすね」
「よく頑張ったな、偉いぞ」

門田に頭を撫でて貰い、目を細める。
作品名:ふざけんなぁ!! 3 作家名:みかる