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一夜

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夜明け前。寝返りをひとつ打つと目を覚まして、真紀は傍らで静かに眠りこける日向を見つめた。そっと男の頬に手をやるが目を覚ます気配はない。静かに体を起こして「んっ」と伸びをして改めて自分が裸なことに気付き、慌てて脱ぎ捨てた下着に手を伸ばす。そっとベッドから下りてショーツを履こうと前屈みになった時の下腹の痛みとチラリと見えたシーツの染みでさっき何があったかを思い出し、顔が朱に染まる。照れ隠しをするかのように手早くTシャツとバギーパンツを身につけると「よっ」と小さく声を出して立ち上がる。

日向はまだ目覚めないだろうが、朝までここにいるわけにもいかない。真紀は名残惜しそうに彼の顔を見つめ、誰が見ているわけでもないのになんとなくキョロキョロと辺りを見回してから、素早く安らかな寝息を立てる日向の唇に自分の唇を重ねた。

自分の宿に帰る旨をメモに残し、荷物を持って部屋を後にする。オートロックのドアがカチャリと音を立てて閉じた瞬間、忘れ物に気付く。置き忘れたのではなく、置いてくるのを忘れたのではあるが。

「あちゃ~、やっちゃった…」

呟くがすぐに立ち直り、考えを新たにする。まあいい。今日、空港に見送りに行って、その時に渡そう。そもそも、そうするために来たんだもん。滅多に履かないスカートだって、そのために持ってきたんだから。

自分に言い訳するように思いながら、少しだけへっぴり腰の真紀は夜明け近い成田の街を、自分の宿へと急ぐのだった。
作品名:一夜 作家名:坂本 晶