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心臓のないうさぎ1

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汚れたみどり
ちぐはぐお耳

誰も誰も 見てはくれない
誰も誰も むかえにこない

むかえにくるのは”ハイキ”の車
ぼっちにまつのは”ハイキ”だけ

ああ呪われた しろうさぎ


その歌を、彼は知らない。
知ったとしてもまるで信じやしないだろう。

だって、あの子は俺が見つけたのだから、誰も見てはくれないなんて嘘だ。
だったらこの歌自体も嘘っぱちだ。

そんな風に彼は考える。だから”ハイキ”なんて言葉、まるで耳に入りやしない。

まるで考えられや、しないのだ。

それが多分、しろうさぎが残した最後ののろい

あの子の一方的な愛情がいつも彼を取り巻いて

決してあの子を見つけさせてはくれない。

だからほうら、今日も悲しいすれ違いの繰り返し。

つくりもののティンカーベルの背中に隠れて彼を目で追い、見えなくなったところで、私はひとりため息をついた。

さすがにこんなつもりじゃなかったはずなのに、と。

きっと、この出会いを企んだ誰もがそう思っているに違いない、詮ない考え事を、煙草の煙のようにくゆらせながら、私は光の粉を撒いて彼の後を追った。



このお話を最後まで見届けるくらいしか、もはや私に出来ることがなかったから。
作品名:心臓のないうさぎ1 作家名:速水湯子