心臓のないうさぎ1
いかだに揺られて島を仰ぎ見る。
天気は快晴、日が高い。周りからは夢の国を満喫するこどもたちの歓声。
俺は、だから小さく微笑む。目的地にいよいよ近づいて、嬉しくて頬がついゆるんでしまう。
もうすぐだ、もうすぐ、会えるね。
ねえ、きみはここにいるって書き置きしたろ
だからむかえに来たんだよ。
隠れないで出てきてよ
それで帰ってごはんにしよう。
お礼代わりにと君が焼く炭の固まりだって飲み込んでみせるから
だからねえ、もうあんまり意地を張らないで
いかだはいよいよ島に近づく。子供の声。子を案じる大人の声。子供に戻る大人の声。この声の中にきっと君の声も混じっているはず。だからこれから、ゆっくり島を歩くんだ。耳をそばだててゆくんだよ。だってきみは恥ずかしがりだったから、俺と二人で居たときはともかく、ひとりでいるときは、自信なさげな、小さな声で喋るんじゃないかなと思うんだ。
ねえ、きみはここに居るんだろう?早く顔を見せて、俺を安心させてよ
俺には本当に、ここしか心当たりがないんだから・・・