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こがみ ももか
こがみ ももか
novelistID. 2182
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だから僕は振り返られない

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机に、突っ伏したい。できるならばいますぐ、できるだけ早く。でろんと、伸びたように。実際、シモンは疲れきっていて、瞼が今にも重力に負けてしまいそうである。
しかし机上にうずたかく積まれた紙束のせいで、その願いは叶いそうにない。彼のサインを今か今かと待っている書類タワーは、その期待を表すかのごとく小刻みに揺れている。これはやばい、と冷ややかな目でさらに書類タワー建設に励む男を見上げた。背もたれに身体を預けると、この男が睨みつけてくるのだ。
「なあロシウ、もういいだろ……これ以上積むと大災害になると思うんだけど」
思いっきりぼやいたところでロシウがそう簡単に心動かされてくれるはずもなく、彼の口から出てくるのは諫言ばかりだった。
「計画的に積んでいますからご心配なく。そもそも、こうなっているのはあなたがそういうふうに文句を言いながらやっているせいで、いっこうに進まないからでしょう。僕にぶつくさ言われてもなにも解決しませんよ、シモン総、司、令」
役職部分を強調してもらわなくてもそんなことは重々承知だ。だからこそ疲弊してしまう。もともと、自分は「穴掘りシモン」で、いうなれば体育会系である。こういう、机にひたすら向かっている作業はまったく向いていない。されど向いていないというわがままが通る問題でもなかった。ロージェノムを倒したあの瞬間から、自分の未来は決まっていた。政治は決して派手なものではない。
手元でペンをくるくると回しながら、シモンは苦笑する。ロシウはなおも厳しい顔つきでこちらを見ていた。
「というかさ、ロシウもちょっとくらい息抜きしたらいいんじゃないかなあ。ずーっとそんな硬い顔してたら表情筋が退化するよ」
「昔からこういう顔でしたよ」
「そうかなあ。違った気がする」
「そうです。七年間、同じです」
ロシウはそれで会話を打ち切ったつもりらしい。これ以上話を続けようとしてもこうなると取り合ってもらえず、むしろ叱られるので声をかけるのはやめた。たまには真面目な姿を見せねばならないだろう。まるで自分たちは親子のようだとたまにおかしくなる。しつけに厳格な親と、奔放でいたずら好きの子ども。なんだかんだ言って仲がいい二人。
しかし、親──ロシウは、厳しい面しかないわけではなかった。それは、「仲のいい親子のような二人」にすっと、影を落としていた。