こんなG8会議は嫌だ
「で、フランスさん、一体貴方はなにをなさっておいでなんでしょうか」
「だから、空豆の回収をー」
「いえいえ、そうではなく、なぜイギリスさんの菜園に野菜が」
「豆って日本のとこ野菜扱いだっけ?」
いえいえいえいえ、そういう話でもなく。
「いや、なんかあの野郎、一応アメリカと距離取るよーになったのに埒明かねぇからさぁ、とりあえず味覚辺りから説得をって」
「いつお聞きしても回りくどい」
な、なんか日本って俺にだけ相対的に酷い、とよよ、とフランスが泣き崩れる。
そんなつもりも特にないのだが、「相対的」とかわざわざ付いている辺りには多少思うところがないでもなく、押し出しが強いけどひょっとして、意思そんなに強いわけではないんじゃないかと疑っていないでもないのだが。
「でもなんで豆類なんですか? 地味なような」
「だって、ソースとかいろいろ使えるだろ? 別の地域に頼られても困るし」
トルコはいいんだけど、中国が強敵で、いや、中国はイギリス眼中にねぇんだけど、とおっしゃっているのはあれですか、経済的な理由なんでしょうか、それにしても料理で落とすってむしろ、いやいやいやいやいや。
「とにかくなぁ、あの根性って絶対料理が不味いからだと思うんだよ」
「説得のためにどこまで遡るんですか」
完遂までにどのくらい掛かるんだろう、その試み。なんとなく一生ないような気がしてしまうのは日本のイギリスに対する偏見だったりするのだろうか、しかし、そのやり方では無理なんではないかというのはそんなに無理もないのではないか。
「お兄さんたちの関係は千年来だし、ちょっとやそっとじゃ」
要するに、千年喧嘩してるのか、と日本は思わないではなかったが。
んー、柔らかくなったかな、とフランスは口に空豆を含んで呟く。
「とりあえず、ドイツと賭けしてっからさ、一袋全部剥けたらソフト規制関連の譲歩を」
「そんなことで決めていいんですか?」
「うん別に、俺とそんなに意見の差がないし、無条件で譲歩するの詰まんないし」
要するにこの人はふざけてるのか真面目なのかわかんないのだな、と日本は結論付けて、はい、と渡された空豆を食べる。ちなみに妙にカナダが目立っていると思っていたのだが要するにイギリスがフランスに独占されていてアメリカが一人で、そうするとアメリカがカナダの方向に向くと自動的に周囲に認知される、という状態ということになるらしいのだが、そんなに普段イギリスってアメリカに構ってたっけ? と考えたがいまいち結論が出なかった、なんとはなく一人でもないようには思うのだが。
「なんだかパズルゲームみたいですね」
「日本は一人でいいっぽいけど、ロシアも余ってるから気を付けてね」
「・・・痛み入ります」
いたみ? とフランスは軽く首を傾げたが、まあ、ニュアンスはだいたい伝わったのだろう、くすくす笑う。
「このままどう調理なさるんですか?」
「潰して砂糖入れて、日本とこの米炊いて叩いて潰して、それで包んで蒸す」
「日本菓子と料理の折衷でしたか」
「豆のままだとアメリカが煩いし、かといってウチの料理だとメインってのはなかなかないからね、日本っていうか、禅宗系のなんだよん」
なんともまあ、とことんマメな。そもそも、なぜ人の家の宗教の宗派に関してまで知っているのだろうか確かに禅宗系は料理で持て成すことを主としている場所もあるが。
「イギリスさん、お喜びになられますかねぇ」
「・・・あ、しまった」
まさか、イギリスの好みを想定し損ねてしまったということだろうか。
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何日か前に思いついた内容、起承転結ってものがありませんぜ、続く。
G8ってタイトルで悩んだんですが、まあ、作品タイトルなら大丈夫よね。
(検索上位に来なきゃいいんすよ、個人的には。)
作品名:こんなG8会議は嫌だ 作家名:紅夜(こうや)