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ある日の話

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すとんと、身体中から気が抜けた。広げられた腕へと、倒れこむようにして傾いていく。

(“何も、考えなくていい”)

今更ながら、彼の言葉が浮かんでくる。
何も考えなくていいらしい。俺は、何も考えずに、そのまま、素直に。
気が付けば、軋むほど目の前の身体を抱き締めていた。こうでもしないと身体の震えが止まりそうになかった。
声を殺した。
泣いたのは、果たしていつ振りだったのだろうか。






あれから喉の渇きはぱったり止んだ。人間というのは不思議なもので、思い出になると途端に現実味がなくなっていく。
俺はどうしようもなく馬鹿な人間だったらしい。そのことに気付いたのはついこの間のことで、自分で自分を憐れみたくなる。
とん、とん、と一定のリズムで指を叩く。温かい手のひらは、そんな俺の悪戯も優しく受け止めていた。動きを止めれば、気付いた彼がぎゅっと握りこんでくる。
言わずとも気持ちが伝わるくすぐったさに小さく笑えば、なんやねん、と不満げな声が聞こえた。
あぁそうだ。喉の渇きをなくした代わりに、俺は新たに欲しいものができたということだけは、確かに言えることだった。
作品名:ある日の話 作家名:ハゼロ