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【静帝/女体化】不思議色ハピネス【腐向】

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 彼は自分を助けてくれたと言うのに、さっき暴力を揮った彼が怖くて。
 ちゃんと助けて貰ったお礼を言わなきゃいけないと頭では判っていても、喉が震えて上手く口に出来なかった。
 すると彼が、唐突に告げた。

「あんたが一番好きなのって、どれだ?」
「え…」

 プチフラワーを集めた花束が数種展示されているコーナーを顎で示されて、帝人はその中の一つ。ピンクのガーベラが目立つものを指差した。

「じゃああれ買う。幾らだ?」
「ごっ、500円ですっ…!」
「そっか。ほら、丁度だ」
「あ、有難う、ございます…!」

 ズボンのポケットから500円玉を取り出しレジに置いた静雄は、買ったばかりの花束を帝人に差し出した。

「え…」
「これ、あんたに。さっきは悪かったな。怖がらせちまってよ」
「いいんです、そんな…!」
「いいから受け取ってくれよ。な?」
「…何だか気を使わせて、すいません」

 帝人は静雄が傾ける花束を両手で受け取って、じっと彼を仰ぎ見た。

「あの、前から家の店、覗いてましたよね…どうしてですか?」
「なっ!バレちまったかっ?!」
「はい。判り易いですし」

 静雄はサングラス越しでも判る整った顔を赤く染めて、気まずそうに俯いた。そうして照れている彼が可愛く思えて、帝人は緊張をほぐす。

「ずっと礼が言いたかったんだ。あんたに作ってもらった花束…弟が凄え喜んでくれてよ。だから…有難うな」
 
 それだけの事が言いたくて、ずっと張り込みをしていただなんてと帝人は驚き面食らった。

「そんなに遠慮しなくても…気軽にお店に来てくれれば良かったのに」
「出来ねーよ!」
「どうして、ですか?」
「あんたに…っ、ちくしょー、言うからな!あんたに、一目惚れしちまったからだよ…!」
「え…」

 生まれて初めて、真剣な告白を受けて帝人は戸惑いを覚えたけれど、直感的に思った。
 この人なら、良いかもしれないと。
 きっと彼は帝人を大切にしてくれると。そして不器用で優しい彼に、自分は惹かれ始めていると。

「嬉しいです、有難う御座います」
「お、おお…じゃ、じゃあな!」

 くるりと踵を返した静雄の広い背中に、帝人はそっと問いかけた。

「付き合ってって、言ってくれないんですか?」
「え…」
「僕、今…彼氏居ないんです」
「…っ!」

 思考を終えた青年が少女の両肩に手を置くまで、あと30秒。
 青年が顔面を真っ赤にしながら『…付き合え!』と告白するまであと45秒。
 少女がその言葉に頷き、白い頬を染め純情可憐な微笑を浮かべるまであと60秒。
 青年が少女のファーストキスを奪うまで、あと――
 青年と少女から成長した女性が人生の伴侶として互いを愛する事を誓い、口付けを交わすまで、あと――

*END*