二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
おたっきー
おたっきー
novelistID. 20458
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

吸血鬼異変 1

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 数は、二十から三十といったところだろうか。
 まだ、こちらに向かっているのかどうかすらも曖昧な距離だが、
 それが吸血鬼であることは、ほぼ間違いないと思えた。
「おい、霊夢、無理しなくてもいい、少し後ろに」
 下がって様子を見よう、と言いかけた言葉を、突風に寸断された。
 横殴りの衝撃。隣に並んでいた霊夢が急激に飛翔速度を増したのだ。
 魔理沙は、その煽りをモロに受けて、思わず顔を覆い、
 気づいたときには、相棒は遥か前方をかっ飛んでいた。
「――はっや」
 抑えた速度で、今まで先陣きってたのかよ、とんでもない奴だ。
 魔理沙は半ば呆然として、その後姿を目で追う。
 だが、すかさず、胸元の札から紫の激が飛んだ。
『何してるの、魔理沙、早く追いなさい!』
「……はぁ? この年増妖怪め、無駄に歳食ったその経験はお飾りかよ」
 いい加減うんざりして、魔理沙はため息と共に本音をぶちまける。
「あの吸血鬼の群れに単独で突っ込んでいったらどうなるか、
 そんなもの馬鹿だってわかる。一瞬で袋叩きにあってお終いだ」
『だからこそよ。あの子をここで失うわけには行かないの。援護して』
「失うワケにはいかないだぁ? そんなの知ったことか。
 そんなに大切なもんなら、こんなとこに引っ張り出してくるなよ」
『事情があるのよ』
「――これだから、知った風な口きく妖怪はさ。私に盾になれってのか?
 お前が何かを知ってても、私は何も知らないんだ。納得できるかよ」
『……聞きたいかしら?』
「――何をだよ」
『私の知ってること。協力してくれたら、教えてあげてもいいわ』
「……取引しようってのか?」
『興味あるでしょう? 貴方にとっても、悪い話じゃないと思うわ』
「……分からなくはないけどな。手遅れだよ、あんなもん追いつくか」
 魔理沙は、ため息をつきながら目を細める。
 一体どういうつもりか、独断先行した霊夢の影は、もう遥か向こうだ。
 だが、紫の声は、何故か妙に落ち着いたものになっていた。
『あら、貴方のその飛行速度はお飾りなのかしら? 
 さっき部隊の最後尾から、先頭まで一気に追いついて見せたじゃない」
 まるで、魔理沙の揺れ動く心中を、見透かしたように口にする。
 そう、妖怪たちは何も、綺麗に隊列を組んでいるわけではない。
 彼らは自分の意思に忠実だ。
 この作戦に消極的なものもいれば、積極的なものもいる。
 当然飛行速度にもばらつきが出る。
 そんな彼らの先頭に、魔理沙は先ほど、難なく追いついたのだ。
「人をけしかけんのが上手いな、あんた」
『――無駄に長生きしてないのよ』
 冷え冷えとした声。瞬間、魔理沙の背筋を嫌な悪寒がぞくっと走った。
 何か言ってはいけない事を口にしたのかも知れない。
『さっきの言葉、聞かなかったことにしてあげるから。お願いするわ』
「……わかった。その代わり、あんたはさっきの言葉、忘れんなよ」
『お互いが無事であればね』
「っへ、それまでボケずに待ってろよ」
 魔理沙はそういうと、再度、帽子をぎゅっと押さえつけた。
作品名:吸血鬼異変 1 作家名:おたっきー