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小林賢太郎演劇作品『ロールシャッハ』二次小説

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 三人揃ってテントをでた後もその興奮は冷めやらず、僕は気を落ち着けようとその場で大きく深呼吸した。
「すごい…富山さんすごすぎるよ」
「まさかあの人があそこまで成長しているとはなあ」
「まさか無理矢理立たされるとは…」
 少し不服そうな顔で串田くん。
「文句あるか?」
「いいですけど!別に嫌だったわけじゃないし!オレもすげーと思ったし!」
 そう言いながら時計を見て、あっと声を上げた。
「やべっもうこんな時間!」
「え、こんな日に何か約束でもあるの?」
「ちょっと今日じゃないと駄目な予定が入っちゃってるんだよ…あーごめんなさい!富山さんには代わりに謝っておいて!もしかしたら後で合流できるかもしれないし!」
「おいおいちょっと待てよ…今からでも遅らせられないのか?」
「そうだよ…せっかくのお祭りなのに」
 今すぐにも駆けだしていきそうな様子に壷井さん同様慌てたけど、串田くんの気持ちは変わらないらしい。
「それがずらせるような予定じゃないんですよ、ほんとごめんなさ…いや、これを理由に今後も四人で会えるようにすればいいんじゃん。ね? そういうことで決まり!」
 そんな風に一方的に言い切ると、突然彼は僕たちに向かって敬礼した。
 思わず二人揃ってやり返すと、にやりと串田くんは笑って言った。
「もう開拓隊とか関係ないのにね。壷井装填手、天森観測手!あといないけど富山指揮官!また近いうちに!」
 そういうと彼は振り向きもせず、時計台広場の方へと駆けだして行ってしまった。
「なんなんだよばたばたと…せっかく久しぶりに四人そろったっていうのによお」
「ですよねえ…でもま、彼の言うように、これを理由にこれからも会うようにしちゃえばいいんじゃないですか?」
「…それもそれでありかもな」
 そう言って二人で笑って。
 笑いながら、僕はふとそれに気がついてしまった。
「…ん?」
「どうした?」
「いや…たぶん気のせいだと思います」
「いいから。言えよ」
「じゃあ…彼いま、左手で敬礼していきませんでした?」
「…え?」
「向かい合わせだったからわかりにくいけど、なんか、こっちの手で敬礼したような…」
「…………」
「…………」
『いや、まさかね!』