愛しい物語の終わり
彼らのエピローグ
しんら、しんら、もうやめよう。
帰ってきた途端、彼女はそう言って僕に縋りついた。思わず地面に尻餅を付いた僕は、わんわん泣いている彼女を見て、ぎょっとしてこう尋ねた。
どうしたんだいセルティ? そんなに泣いて。一体何を止めるって?
そう言いながら、僕は彼女がヘルメットを紛失していることに気が付いた。この状態で街中を走ったのだとしたら、表は今頃大騒ぎになっているだろう。
やみいしゃなんてもうやめよう。そんなことしなくても、わたしがはたらいてやしなってやる。いなかへこしたっていい。だからおねがいだ、もうやめよう。
平仮名の洪水から彼女の意図を汲み取った僕は、彼女を安心させようと微笑みを浮かべた。
君がどうしてもって言うなら、僕はそれで構わないよ。だけど、理由を聞かせてくれないか? どうして急にそんなことを?
彼女は僕の質問には答えず、泣いて首を振るばかりだった。
あれから、丁度一ヶ月経った頃だった。