かけあい交錯チルドレン
スガタとタクトは演劇部の部室にいた。
ワコを含めた三人は部室で昼ご飯を食べていたのだが、次の授業の体育で女子はテストがあるらしく、練習するからとワコが先ほど出て行ったのだ。
いつも一緒にいる二人だが、二人きりになることはほとんどない。
タクトもスガタも人を集める性質らしいく、意図的に落ち合うか、人払いをしなければ到底無理だ。
ワコが出て行った扉が、パタンと小さな音を立てて閉った瞬間から、タクトはスガタの存在を意識せずにはいられなかった。
ペットボトルを唇に添えると、うっすらと口を開いてアゴを反らす。
流れ込む液体が口内を満たし、唇の淵を濡らした。
そんなスガタの当たり前な仕草が、タクトには一つ一つ鮮明にコマ送りに見えた。
ごくりと生唾を飲んでいた自分にはっとした。
「どうかした?」
タクトが一人で赤面していたので、スガタが不思議がる。
「な、なんでもっ。・・・・・なんでもないよ。」
上ずった声は明らかに何かあり、説得力が無い。
けれど焦る心はそれ以上言葉を見つけられない。
スガタはまじまじとタクトを見つめる。
目を丸くしてアゴを引いた姿は、姿勢がいいのでイタチに似てる。
「ふぅん。」
嘘なのは明白だったが、言いたくないことをそれ以上問いつめる必要を感じず、スガタは興味のなさそうに返事をした。
手にしていたボトルの蓋を閉めながら、なんかエッチなことでも考えてたのかな?と思い、隣のタクトを盗み見た。
まだ頬を赤らめながら、目を伏せてバツの悪そうな顔をしている。
だとしたらバカ正直なものだ。
男にとって卑猥なことは時計を見るのと同じくらい平然と、一日に何度となく頭をよぎる。
いちいち赤面していたら大変だろう。
どうもタクトは天然な所があって、時々記念物級にピュアだ。
恐ろしくもそのピュアさはナチュラルプレイボーイに変貌をとげ、デザートイーグル並の殺傷率を誇って女子を射止めている。
顔色ひとつ変えず、歯が浮くような台詞を吐けるのに、自ら卑猥なことを思うと赤面してしまうのだろうか。
器用で不器用な男だ。
スガタは何も言わず、部室の天井を見つめ黙りこんでしまった。
スガタは横顔美人だと、タクトは常々思っていて、鼻の形があまりに奇麗で見入ってしまう。
女の子より色白で奇麗な肌をしているが、厚みや弾力がやはり女子とは違う。
筋張った首や尖ったあご、肌はきめ細かく指触りがいいが骨張っているので感触は固い。
スガタの睫毛は下向きで短く、切れ長い瞳は羨ましいほど賢そうに見える。
顔の熱は引いたが、見つめていると部室に二人きりだということが居たたまれなくなり、タクトは顔を逸らした。
斜め上を眺めるスガタと対角線に、斜め下に視線を落とす。
視界の端で、タクトが顔を逸らしたのを不振に思う。
横を向けば相変わらず、恥じる様な表情でふてくされたような態度をしている。
その瞳が妙に潤んで、ハの字に垂れ下がった眉が男性ながらに色っぽかった。
「さっきから何?僕の顔に何かついてる?」
なんて言って、昼食のノリが歯にでもついてたらカッコ悪いな。とスガタは内々に思った。
その言葉に弾けるように首をもたげ、驚いた猫の様にタクトが目を見開いた。
「ごめん!そういうんじゃなくて!ごめん!」
妙に慌ててタクトが言うので、スガタは自然と柔らかい微笑みが漏れた。
別に怒ってないのに。
微笑んだスガタを見てタクトはたまらなく胸が締め付けられた。
もうダメだ、素直になろう。
自分で恥ずかしくなるほどに、物欲しい気持ちになっている。
以前鬱々とした気持ちを、ただぬぐい去る為にスガタはタクトに触れた。
愛しさでも執着でもなく、スガタに触れてほしい衝動が今収まらない。
それほどその時のキスが気持ちよかったのだ。
タクトは覚悟を決めて打ち明けた。
「こないだの、この間のさ・・・・・・・・・・もっかいしたい。」
それはマグナムの威力。
ナチュラルプレイボーイは対男性でもその魔性を発揮するのか。
殺傷能力は噂通り、こうも至近距離で銃口を向けられて逃れられるか。
スガタは力が抜けて項垂れると、額を抑えた。
相手は男だというのに、参ったの心境だ。
項垂れたスガタが斜めに自分を見上げた。
心臓を鷲掴みされるほど流し目が似合っていて。
タラシフェイスとタクトは命名。
そんな顔されたら女の子はイチコロだろう。
いや自分もほだされているのだが。
「ここじゃ窓から見えるよ。」
スガタがいうと、タクトは立ち上がりスガタの制服の袖を引っ張った。
廊下側の壁際へと移動する。
奥行きのある教室は、たしかに完全に死角だろう。
2人きりの教室で逢い引きに誘われるのも、なかなか悪いものじゃない。
目の前を歩く赤い髪がフワフワと揺れるのを見ていると、タクトに触れたい気持ちになり横目で昼休みの時間を確かめた。
木造旧校舎の日陰は、空気が冷たく日向と転じて薄暗い。
日陰の中はスガタの領域と言わんばかりに、鋭く怪しい魅力が増す。
向き合うと目線の高さは、ほとんど同じ丈。
普段より一歩近い距離は、それだけで見えるものが違う。
視界はいつもより相手しか見えず、鋭角に俯瞰する頬や襟首が気持ちを煽る。
それはどうみても男なのだが、夏服は布の薄さに体系の輪郭が見え隠れするのがいやらしい。
「癖になったの?」
スガタの声が少しかすれて、囁いた言葉にタクトの全身を熱くする。
「まずいかな?」
質問で返したのは照れ隠しだろう。
タクトから誘われたせいか、スガタは妙に優越感を感じた。
「かまわないよ。癖になってくれて。」
そう言うと一歩前に出て、その体はには触れず唇だけを合わせた。
試すように一回。
スガタの唇がついばむように口づける。
足の下から耳の後ろにかけて、得体のしれない感情が駆け上がる。
興奮?快感??
我を忘れるほど甘美。
探るようにもう一回。
スガタが口づけるとタクトが答える。
途端に支配欲が、背中を強く押す。
恋愛感情とは違う。
対等の存在を支配する優越感。
タクトが答えるとスガタが答える。
タクトはタガが外れないように、結して自分からはスガタの体にもたれない。
バランスが悪いせいで、口づけるというより舌を合わせる二人。
時折濡れる音が、静かな室内にやけに大きく聞こえる。
男の友人にキスをするアブノーマルさに興奮し、気持ちを盛り上げている自分がいる。
もう一方で冷静に状況を俯瞰する自分があって、タクトは何故こんなことにつき合っているのだろうと思う。
自らが重荷を紛らわせたくて始めた遊び。
まあタクトもまんざら嫌じゃないことは分かっているし、でなければこんなことしない。
スガタはあごを引いて角度を変える。
手慣れたようにキスするスガタに、タクトは男として嫉妬する。
一体どこで覚えたのか、なんでこうも上手いのだろう。
そんなことを思っている時、スガタが身を引いたのでバランスを崩して前に傾いた。
受け止めるスガタの手がタクトの肘をグっと包み引き寄せる、タクトはスガタの脇腹に遠慮がちに手を添えた。
深く口づける力が強くて少し仰け反ってしまう。
タクトは自らもあごをあげて、それに答えようとする。
ワコを含めた三人は部室で昼ご飯を食べていたのだが、次の授業の体育で女子はテストがあるらしく、練習するからとワコが先ほど出て行ったのだ。
いつも一緒にいる二人だが、二人きりになることはほとんどない。
タクトもスガタも人を集める性質らしいく、意図的に落ち合うか、人払いをしなければ到底無理だ。
ワコが出て行った扉が、パタンと小さな音を立てて閉った瞬間から、タクトはスガタの存在を意識せずにはいられなかった。
ペットボトルを唇に添えると、うっすらと口を開いてアゴを反らす。
流れ込む液体が口内を満たし、唇の淵を濡らした。
そんなスガタの当たり前な仕草が、タクトには一つ一つ鮮明にコマ送りに見えた。
ごくりと生唾を飲んでいた自分にはっとした。
「どうかした?」
タクトが一人で赤面していたので、スガタが不思議がる。
「な、なんでもっ。・・・・・なんでもないよ。」
上ずった声は明らかに何かあり、説得力が無い。
けれど焦る心はそれ以上言葉を見つけられない。
スガタはまじまじとタクトを見つめる。
目を丸くしてアゴを引いた姿は、姿勢がいいのでイタチに似てる。
「ふぅん。」
嘘なのは明白だったが、言いたくないことをそれ以上問いつめる必要を感じず、スガタは興味のなさそうに返事をした。
手にしていたボトルの蓋を閉めながら、なんかエッチなことでも考えてたのかな?と思い、隣のタクトを盗み見た。
まだ頬を赤らめながら、目を伏せてバツの悪そうな顔をしている。
だとしたらバカ正直なものだ。
男にとって卑猥なことは時計を見るのと同じくらい平然と、一日に何度となく頭をよぎる。
いちいち赤面していたら大変だろう。
どうもタクトは天然な所があって、時々記念物級にピュアだ。
恐ろしくもそのピュアさはナチュラルプレイボーイに変貌をとげ、デザートイーグル並の殺傷率を誇って女子を射止めている。
顔色ひとつ変えず、歯が浮くような台詞を吐けるのに、自ら卑猥なことを思うと赤面してしまうのだろうか。
器用で不器用な男だ。
スガタは何も言わず、部室の天井を見つめ黙りこんでしまった。
スガタは横顔美人だと、タクトは常々思っていて、鼻の形があまりに奇麗で見入ってしまう。
女の子より色白で奇麗な肌をしているが、厚みや弾力がやはり女子とは違う。
筋張った首や尖ったあご、肌はきめ細かく指触りがいいが骨張っているので感触は固い。
スガタの睫毛は下向きで短く、切れ長い瞳は羨ましいほど賢そうに見える。
顔の熱は引いたが、見つめていると部室に二人きりだということが居たたまれなくなり、タクトは顔を逸らした。
斜め上を眺めるスガタと対角線に、斜め下に視線を落とす。
視界の端で、タクトが顔を逸らしたのを不振に思う。
横を向けば相変わらず、恥じる様な表情でふてくされたような態度をしている。
その瞳が妙に潤んで、ハの字に垂れ下がった眉が男性ながらに色っぽかった。
「さっきから何?僕の顔に何かついてる?」
なんて言って、昼食のノリが歯にでもついてたらカッコ悪いな。とスガタは内々に思った。
その言葉に弾けるように首をもたげ、驚いた猫の様にタクトが目を見開いた。
「ごめん!そういうんじゃなくて!ごめん!」
妙に慌ててタクトが言うので、スガタは自然と柔らかい微笑みが漏れた。
別に怒ってないのに。
微笑んだスガタを見てタクトはたまらなく胸が締め付けられた。
もうダメだ、素直になろう。
自分で恥ずかしくなるほどに、物欲しい気持ちになっている。
以前鬱々とした気持ちを、ただぬぐい去る為にスガタはタクトに触れた。
愛しさでも執着でもなく、スガタに触れてほしい衝動が今収まらない。
それほどその時のキスが気持ちよかったのだ。
タクトは覚悟を決めて打ち明けた。
「こないだの、この間のさ・・・・・・・・・・もっかいしたい。」
それはマグナムの威力。
ナチュラルプレイボーイは対男性でもその魔性を発揮するのか。
殺傷能力は噂通り、こうも至近距離で銃口を向けられて逃れられるか。
スガタは力が抜けて項垂れると、額を抑えた。
相手は男だというのに、参ったの心境だ。
項垂れたスガタが斜めに自分を見上げた。
心臓を鷲掴みされるほど流し目が似合っていて。
タラシフェイスとタクトは命名。
そんな顔されたら女の子はイチコロだろう。
いや自分もほだされているのだが。
「ここじゃ窓から見えるよ。」
スガタがいうと、タクトは立ち上がりスガタの制服の袖を引っ張った。
廊下側の壁際へと移動する。
奥行きのある教室は、たしかに完全に死角だろう。
2人きりの教室で逢い引きに誘われるのも、なかなか悪いものじゃない。
目の前を歩く赤い髪がフワフワと揺れるのを見ていると、タクトに触れたい気持ちになり横目で昼休みの時間を確かめた。
木造旧校舎の日陰は、空気が冷たく日向と転じて薄暗い。
日陰の中はスガタの領域と言わんばかりに、鋭く怪しい魅力が増す。
向き合うと目線の高さは、ほとんど同じ丈。
普段より一歩近い距離は、それだけで見えるものが違う。
視界はいつもより相手しか見えず、鋭角に俯瞰する頬や襟首が気持ちを煽る。
それはどうみても男なのだが、夏服は布の薄さに体系の輪郭が見え隠れするのがいやらしい。
「癖になったの?」
スガタの声が少しかすれて、囁いた言葉にタクトの全身を熱くする。
「まずいかな?」
質問で返したのは照れ隠しだろう。
タクトから誘われたせいか、スガタは妙に優越感を感じた。
「かまわないよ。癖になってくれて。」
そう言うと一歩前に出て、その体はには触れず唇だけを合わせた。
試すように一回。
スガタの唇がついばむように口づける。
足の下から耳の後ろにかけて、得体のしれない感情が駆け上がる。
興奮?快感??
我を忘れるほど甘美。
探るようにもう一回。
スガタが口づけるとタクトが答える。
途端に支配欲が、背中を強く押す。
恋愛感情とは違う。
対等の存在を支配する優越感。
タクトが答えるとスガタが答える。
タクトはタガが外れないように、結して自分からはスガタの体にもたれない。
バランスが悪いせいで、口づけるというより舌を合わせる二人。
時折濡れる音が、静かな室内にやけに大きく聞こえる。
男の友人にキスをするアブノーマルさに興奮し、気持ちを盛り上げている自分がいる。
もう一方で冷静に状況を俯瞰する自分があって、タクトは何故こんなことにつき合っているのだろうと思う。
自らが重荷を紛らわせたくて始めた遊び。
まあタクトもまんざら嫌じゃないことは分かっているし、でなければこんなことしない。
スガタはあごを引いて角度を変える。
手慣れたようにキスするスガタに、タクトは男として嫉妬する。
一体どこで覚えたのか、なんでこうも上手いのだろう。
そんなことを思っている時、スガタが身を引いたのでバランスを崩して前に傾いた。
受け止めるスガタの手がタクトの肘をグっと包み引き寄せる、タクトはスガタの脇腹に遠慮がちに手を添えた。
深く口づける力が強くて少し仰け反ってしまう。
タクトは自らもあごをあげて、それに答えようとする。
作品名:かけあい交錯チルドレン 作家名:らむめ