二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

かけあい交錯チルドレン

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

人は肌が触れ合うとセロト二ンが出るんじゃないだろうか。
人の体温を感じると、心が弛緩する。
その感覚に自分が、ただ生活するだけでそんなにも張りつめているのだと知る。
もっとこの体温を感じたい。
涼しい部室はその欲求に都合がいい。
スガタはその手をタクトの背中に回す、さするように滑らせながら体を引き寄せた。


スガタが体を抱きしめるので、顔が仰け反ってキスがしずらい。
倒れそうになると、スガタは体を反転させて壁に押し付けた。
自らの後ろに添えられた手が、確かめるようにタクトの体をなでる。
ブラジャーのホックを探すしぐさみたい。
一瞬ワコを頭に浮べた自分に不快感を感じた。
気持ちを取り戻すために、タクトはスガタの頭に手を添えて、一度キスをやめさせた。


「アレやってよ。」
タクトが僅かに息を乱して言った。
アレは何かわからず視線で尋ねると。
「ベロ吸うやつ。」
そう言うと舌をちょとだけ突き出した。
スガタはにやりとする自分に、今よくない顔をしたと思う。
しかしこれだけ顔が近ければ、表情なんてわからない。
スガタはタクトの希望に答えるべく顔を近づけた。


その快感にタクトはうっとりする。
さっきまでキスがしたいと言い出せず、恥じらっていた自分はもういない。
「ねぇねぇ。」
キスの最中にしゃべるので声が篭る。
「僕あれが好き、歯の後ろなぞるの。」
そう言ってタクトがスガタのマネをしてみる。


タクトの舌先が自らの口内を這う感触に、スガタの支配欲が満たされるのを感じた。
悦楽からいやらしくも笑いが漏れる。
「これってあぶなくない?」
素直にキスを貪り、快楽に忠実に行動するタクトに、溺れてしまいはしないだろうか。
僅かな危機感が頭をよぎるが、それより今は目の前の友人が妙に愛おしい。
「まあ・・・誰かに見られたらかなりヤバイね。」
そういってタクトは悪戯な笑みを浮かべ、また口づける。
その笑みは共有と、おかしくも友情を感じる。


幼い少年の悪戯な秘密のよう。
帰り道の立ち小便スポットとか、宝物を見せびらかした秘密基地とか。
あの頃タクトにはたくさん友人がいたが、大人に近づくごとに心を許せる人は居なくなっていった。
今思うと、いつまでも自分が大人になりきれないからかもしれない。
タクトは一人、少年時代の秘密基地に取り残されていたんだと思う。


スガタは子供の頃から大人として振る舞わねばならなかった。
幼い頃から心を明かせる人間はいなかった気がする。
信頼できる者はたくさんあって、それは贅沢なことだと思っていたが。
今思うと、いつまでも自分は子供にもどりたいのかもしれない。
幼少期に育むそれより、いま生まれたそれの方が、より深い絆を感じた。


もしかしたらスガタに出会う為だったのかもしれない。

もしかしたらタクトに出会う為だったのかもしれない。

この奇妙で危うくも、おかしな友情に出会うために。

いつまでも子供で、いつまでも大人になりきれず、少年達は悪戯な秘密を欲しがっていた。
けれど16歳の本能は大人になろうとしていて、二人は迷宮に迷い込んでいる。

タクトが何か言おうとした時、予鈴の音が木造校舎に響き渡った。
何か歯切れの悪さを感じながら、スガタはその言葉を聞き返しはしなかった。
「体育だから早く帰らなきゃ。」
途端にスイッチを入れ替える。
「そうだね。」と返事をすると、タクトも熱が覚めていく。
次はタクトが好きな体育だから、興味はすぐにそれに移った。
「バスケのチーム分けどうなるかな?」
「僕とタクトは分けられると思うよ。」
二人は思い出し笑いする。
「僕らのチームだいぶ勝っちゃったもんね。」
「別々の方が面白いよ。」
スガタの視線にタクトは好戦的に微笑み返す。
「じゃあ、勝負つけようか。」
「望むところ。」

二人は部室を後に歩き出した。
階段の吹き抜けから、夏を思わせる日差しが降りそそぐ。
スガタは心が湧きたつのを感じた。

残りの授業はあっという間だ。
帰りは三人でどう過ごそうか。
作品名:かけあい交錯チルドレン 作家名:らむめ