白雨
「―――ウソツキめ」
それは、どっちだろうね、スガタ。
『僕には、タクトさえいてくれたらそれでいい』
キスの後に聞こえた、スガタの声。
「嘘じゃないさ…そのうち、ね」
島を捨てられないくせに、僕だけでいいなんて。
そうして。
スルリ、スガタの手に自分の手を絡めた。
「タクト?」
「…誰も、見てないんでしょ?」
少しだけ。
「……そうだな」
ごめんね、の代わりに手を繋ぐ。
僕も、この島に居続けることを選べない。
いつか離れる時が来るかもしれない、その現実に、今は蓋をしてしまおう。
二人で、優しい嘘を重ねて。
end.