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鍋とお酒と、道化師の奇行

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突然のことに、静雄は目の前の少年のことばを瞬時には理解できなかった。たしかに静雄は帝人に対しては、臨也や新羅、セルティとは少し違う感情を持っていた。静雄自身、その感情が何なのかはどうでもよかった。一緒にいると心地よく、離れると不安だった、それだけのことだ。

静雄「・・・お前、何言ってんだ」
帝人「静雄さんのすべてを僕に預けてください。そうすれば、僕は僕のすべてをかけてあなたのすべてに責任を持ちます。そういう意味ですよ。すぐに返事をくれなくてかまいません、ゆっくり考えてください。それを待つくらいの余裕はあります。・・・あ、ひとつだけ僕から条件を提示しておきますが」

ウソや冗談を言っている様子ではなかった。からかいだったなら笑って受け流すこともできたが、どうもそうではない。本気だ、本気で自分を飼うつもりでいるのだと静雄は感じとり、少年から放たれる気迫に体が震えた。背中を冷たい汗が流れた。

帝人「僕といっしょにいるときにはぜったいに臨也さんを優先しないと約束してください。そこは譲れません」

なんて独占欲の強い飼い主だろう。けれど、静雄は帝人から眼が離せなかった。おそるおそる手を伸ばす。その触れたら壊してしまいそうなやわらかい頬にそっと手を当てる。静雄には今、自分の口角が上がっている自覚があった。そのくもりのない澄んだ青い瞳がいつも自分だけを見つめてくれるなら、それは甘美な想像だった。もしも自分がここでイエスと答えたら、この澄んだ瞳の少年は俺だけを見つめ、すべてを受け入れ愛してくれるというのだろうか。こんな化け物じみた俺を?

静雄はごくりとひとつ息をのむと、口を開いた。その返答を聞いたのは、彼の目の前の平凡な容姿の少年だけだった。