輝き×惹かれる魂
スガタがタクトに惹かれるのは当然だ。
タクトがスガタに惹かれてるから。
スガタは引き寄せられるように階段を降りた。
同じ高さに立つと、ポケットに手を入れたまま、タクトがきらきらとした目で見つめ返す。
以前にもこんなシチュエーションがあったと思う。
この瞳に吸い寄せられてキスをした。
「もう一度キスしていい?思い出すかもしれないから。」
「絶対思い出せよ。」
微笑むタクトが目をつむり、スガタはキスなどせずとも分かっていた。
「タクトが好きだ。」
口づけてそう呟く。
その頭をそっと包み込んで、もう一度口づける。
タクトは微動だにせず、二度目のキスも受け入れる。
確信してもいいのだろうか?
全ての人に問いたい。
ワコに、タクトに、シンドウの家に、クラスメイトに、神父様に。
「ほんとにこれでいいのか。この感情が真実だとしても・・・。」
「だから言ってるでしょ。」
タクトは遮って言った。
「言い訳したってスガタは本能に忠実だよ。お前は諦めたって諦めらめ切れないヤツなの。」
「クールなふりして、最後まで抗う、それがシンドウスガタだよ。」
タクトはようやくポケットから手を出す。
スガタはその頭を離さない。
「もう一度、キスしたい。」
それでタクトはちょっと照れくさくなって、「いいよ。」と微笑む。
重なる二つの影に、夜空にはもう満点の星が瞬いていた。
心臓は一人で動くけど、惹かれ合う魂はお互いを探して彷徨ってる。
無数に輝く星々の中で、その出会いは一番に輝くスピカみたいだ。
引き合う連星は軌道を描いて一つに輝く。
「ねえスガタ。」
「ん?」
「もう一度キスして。」
少年少女は揺らめきながら、星々の息吹きのように輝いて惹かれ合う。
□
いつの間にか梅雨も明けたようだった。
快晴の下、三人はバスに乗っていた。
相変わらずワコとタクトはしきりにふざけ合い、笑い合っている。
うんざりするほど、見慣れた風景が窓の外に開けた。
二人の声を聞きながら、スガタはこの風景も心地よく思った。
今日こそ紅茶の茶葉を買おう。
そしたら急須でユニークなお茶会をしよう。
そのあとくらいにゼロ時間に招かれるだろう。
今なら敗北も大丈夫。
僕たちはまた輝ける。