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崖っぷちの恋愛

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なにを言われたのか、とっさには理解できなかった。

「先手必勝ってこと、だよね」

 一体、なにが。なにに対して。
 そもそも、この状況がなにを示しているのかがまったくわからない。

(こ……怖いっていうのもまた違うけど、でもなんかこう、凄絶なんですけど!?)

 それは、上から見下ろしてくる佳主馬の笑み。
 若干十三歳、去年までランドセルを背負っていたはずの中学生にこんな表情ができるなんて、知らない。健二が十三歳だったのはたった四年前の話だけども、絶対にこんな顔はできなかった。
 する、必要すらなかった。

「か……かず、ま……くん?」
「なに」

 なんとか口を開いて、言葉を継ぐ。口の中がなぜかカラカラになっていて、うまく舌が動かない。

「あ、あの、えっと……その」
「用がないなら、黙って」

 明確な意図を持って、佳主馬の指が唇に触れた。年齢相応の、もしかしたらそれよりも華奢な細い人差し指と中指が、乾いた唇をそっとなぞっていく。

(だ、黙ってって言われても)

 おとなしく、それに従っていていいのだろうか。
 否、よくない。いいわけがない。
 理由なんて少しもわかりはしないけれど、でもこのなにが起こっているのかまったく理解できない状況がに甘んじていいなんてことはありえない。

「よっ、用ならある! あるから!」
「だから、なに」

 あわてふためいて叫ぼうとする唇をなだめようとしているのか、それともおさえつけようとしているのか。佳主馬の親指が、唇の隙間に入り込んでくる。

(いや、だから、おかしいから)

 佳主馬の指の動きも。少しずつ近づいてくる顔も。
 健二は今、床に完全に頭をつけて横たわっていた。正確には、今腹の上へと馬乗りになっている少年に、そういう状態にさせられたわけだが。

「あ、あの、かずまくん」
「悪いけど」

 左手一本で軽々と身体を支えながら、佳主馬はじつに綺麗な笑みを見せる。

「前言撤回は、しないから」

 正体のわからない震えのようなものが背筋を走り抜けていったのは、おそらく気のせいではないだろう。
作品名:崖っぷちの恋愛 作家名:Kai