Rest in peace
‐Rest in peace‐
通い慣れた道を、何となく重い足取りで歩く。その手には白い薔薇の、小さな花束。
堅牢な扉を開くと、同じ形をした無数の質素な石碑たちが目の前に広がる。
フォルトゥナ城内の一画にある墓地。
ネロは以前からキリエとクレドとともにここを訪れていた。二人の両親の墓参りをするためだ。ここを訪れる度に、まだ幼さの残るネロは誓いを新たにしていたものだ。キリエを守るという、その誓いを。
そういった意味でこの場所はネロにとって大切な場所のひとつとなっていたのだが、フォルトゥナを震撼させたあの事件以来、ネロはこの場所から足が遠のいていた。復興の方が忙しく余裕がなかったから、という理由もあったが、それが言い訳でしかないことをネロは十分に理解していた。
クレド・・・
心の中で呟く。あの闘いの最中で、彼はキリエを、そしてネロを守ろうとして命を落とした。信心深く、心の底からフォルトゥナとそこに住む人々を大切に想い、それ故に道を違えてしまったクレド。彼は今に至るまでのネロにとって、煩く思いながらも尊敬し憧れる対象であった。そのクレドの墓は、彼の両親の墓の隣に作られた。正式な墓を建造する際に、キリエが強く希望したためだ。だが、クレドはここに眠っているわけではない。悪魔となってしまったその身は、亡骸を残すことなく霧消してしまった。そのことがより一層、彼の死をネロにとって受け容れ難いものにした。ネロも頭では理解していることだった。それでも、こうしてこの街にいると、彼の面影がちらついて離れない。まだどこかで生きているんじゃないか、そういう気持ちにさせられる。
キリエはネロの想いを察してか、これまで一度もネロをここへ誘ったことはなかった。キリエも唯一の肉親であるクレドの死を容易に受け容れられたわけではなく、その落ち込む様はネロの比ではなかったが、何よりも復興を求める人々の想いが彼女を強く支え、立ち直らせた。
そして、あの事件から半年がたった。今や市街地に悪魔が現われることも殆どなくなり、街は落ち着きを取り戻しつつあった。そうした状況になってようやくネロは、クレドの墓を訪れる決心が付いたのであった。
通い慣れた道を、何となく重い足取りで歩く。その手には白い薔薇の、小さな花束。
堅牢な扉を開くと、同じ形をした無数の質素な石碑たちが目の前に広がる。
フォルトゥナ城内の一画にある墓地。
ネロは以前からキリエとクレドとともにここを訪れていた。二人の両親の墓参りをするためだ。ここを訪れる度に、まだ幼さの残るネロは誓いを新たにしていたものだ。キリエを守るという、その誓いを。
そういった意味でこの場所はネロにとって大切な場所のひとつとなっていたのだが、フォルトゥナを震撼させたあの事件以来、ネロはこの場所から足が遠のいていた。復興の方が忙しく余裕がなかったから、という理由もあったが、それが言い訳でしかないことをネロは十分に理解していた。
クレド・・・
心の中で呟く。あの闘いの最中で、彼はキリエを、そしてネロを守ろうとして命を落とした。信心深く、心の底からフォルトゥナとそこに住む人々を大切に想い、それ故に道を違えてしまったクレド。彼は今に至るまでのネロにとって、煩く思いながらも尊敬し憧れる対象であった。そのクレドの墓は、彼の両親の墓の隣に作られた。正式な墓を建造する際に、キリエが強く希望したためだ。だが、クレドはここに眠っているわけではない。悪魔となってしまったその身は、亡骸を残すことなく霧消してしまった。そのことがより一層、彼の死をネロにとって受け容れ難いものにした。ネロも頭では理解していることだった。それでも、こうしてこの街にいると、彼の面影がちらついて離れない。まだどこかで生きているんじゃないか、そういう気持ちにさせられる。
キリエはネロの想いを察してか、これまで一度もネロをここへ誘ったことはなかった。キリエも唯一の肉親であるクレドの死を容易に受け容れられたわけではなく、その落ち込む様はネロの比ではなかったが、何よりも復興を求める人々の想いが彼女を強く支え、立ち直らせた。
そして、あの事件から半年がたった。今や市街地に悪魔が現われることも殆どなくなり、街は落ち着きを取り戻しつつあった。そうした状況になってようやくネロは、クレドの墓を訪れる決心が付いたのであった。
作品名:Rest in peace 作家名:柳田吟