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Rest in peace

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 しばし沈黙が流れてから、徐にダンテが踵を返し、扉の方へ足を向けた。そのダンテの背中に、慌ててネロは声を投げる。
 「なんだよ、もう帰るのか」
 「ああ、邪魔者は退散するよ」
 ふとダンテは足を止めて、ゆっくりと振り返る。ネロを見るその目が先程までとは違い慈しむようなものに感じられて、少し戸惑いを感じた。
 「お前は強いよ。大丈夫だ」
 それだけ言うと、静かに目を伏せてから、今度こそダンテは墓地を後にした。
 ・・・何だったんだろう、今のは。
 残されたネロは先程のダンテの瞳を、言葉を思い出しながら、不思議な感覚にとらわれる。ダンテの去った空間に茫然と立ち尽くしていたネロだったが、やがてその体をクレドの墓の方へと向け直した。
 ずっとクレドの死が信じられなかった。自分が追いかけ続けていた背中がもう存在しないなど思いたくなかった。クレドなしで、自分はキリエを、この街を守っていくことができるのだろうか。自分にそれだけの力があるのだろうか。
 そんな漠然とした不安を、ダンテが見抜いていたのかどうかはわからない。だが、ダンテの言葉はそんなネロの背中を後押しするには充分であった。




 俺はこの先もずっとこの街を、キリエを守り続けます。
 ずっと素直になることができなかったけれど、あなたには心の底から感謝しています。
 あなたはずっと俺の憧れでした。あなたのように強くなれたらと、ずっと思っていました。
 今の俺じゃまだまだかもしれないけれど、あなたが愛したこの場所を、俺も守り続けます。
 だからどうか、安らかに     。




 -了-

作品名:Rest in peace 作家名:柳田吟