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I’m so happy,now

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-I’m so happy,now-

 頭がぐらりと傾ぐ感覚に、ダンテはぼんやりと目を開く。どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。まだはっきりしない頭で部屋を見渡すが、いつもと特に変わった様子はない。にも拘わらず、何となく落ち着かないような胸騒ぎを感じる。
 「客」の訪問かと、頬をぴしゃりと打って意識を覚醒させ、神経を張り詰める。虫の知らせなどくだらないと思いつつも、ダンテは自分の直感を何よりも信頼している。そしてその直感が告げるのだ。何かが起きる、と。
 黒檀のデスクにふんぞりかえった姿勢は崩さないままに、ダンテは体を堅くする。その時、部屋の外に何者かの気配を感じた。コツコツと靴音を響かせて歩く様には、まるで警戒心を感じない。むしろ自分の存在を知らしめているかのようだ。その気配に、歩き方の癖に、ダンテは自分のよく知る人物を思い出し、そしてすぐにその思いを打ち消す。あいつがここにいるわけがない、と否定しながらも、どこかそれを待ち望んでいる自分に気づいて、皮肉に嗤う。
 足音はやがて、扉の前でぴたりと止んだ。警戒を強めるダンテのことなど素知らぬ様で、扉は躊躇いを見せずに、だがゆっくりと開かれた。
 扉の向こうから姿を見せた人物を一瞥して、ダンテの顔にいかにも複雑そうな表情が浮かぶ。ある程度それを予期していたのは事実だ。むしろ、待ち望みさえしていたのだ。それでも、今目の前で起きたことが信じられず、ダンテは自分でも気付かぬうちに、嘘だろ、と小さくつぶやいていた。相手にその声は届いたようで、僅かに笑みを浮かべた。
 開いた扉から堂々と事務所に入ってきた彼の姿は、ダンテのよく見知っているそれとは少し異なっていた。その顔たちは、積み重なった年月相応に大人びたものになっている。背は、あの頃より少し伸びただろうか。圧倒的な力を発揮するわりに細身なその体が、彼の知的な佇まいをより強固なものにしている。冷たくこちらを射抜くようだった眸は、今は何を思っているのか読むことはできない。それでもあの頃と変わらないのは、後ろに撫でつけられている、ダンテと揃いの銀の髪。
 身動きできないでいるダンテをまっすぐに見据えながら、彼は足早に歩いてきて、デスクを挟んでダンテと対峙する。その表情はやはり何を思うのか掴めないが、随分と柔らかい表情だと、混乱する頭で思う。
 どれくらいそうして見つめあっていただろうか。先に沈黙を破ったのは、ダンテの方だった。
 「久しぶりだな・・・・バージル」
作品名:I’m so happy,now 作家名:柳田吟