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I’m so happy,now

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 「おい!ダンテ!」
 大声に目を覚ますと、ぼやけた視界の中に少し困ったような表情のネロが映った。いつの間にか眠ってしまっていたようだった。夢を見ていたような気がするが、どんな夢だったのかは思い出せない。ただ、何か温かくて嬉しくて、しかし寂しいような、そんな夢だったと、まだ覚醒しない頭で考える。
 「うるせぇな、そんな大声で叫ばなくたっていいだろ。だいたいどうしてお前がここにいるんだ?」
 「今日からしばらくこっちで世話になるって連絡しただろうが。仕事、手伝わせてくれるんだろ?」
 そういえばそういう約束だったなと思い出す。もうちょっと力をつけたら仕事を手伝わせてやると言ったダンテの言葉をしっかり覚えていたらしく、どこそこの悪魔を倒したから助手にしろと、随分不遜な態度で申し出てきたのだ。相棒にしろと言いださなかっただけマシだと、その時は思ったものだ。
 「ああ・・・そうだったな。だが悪いがここのところ依頼がなくってな」
 「何だそれ。まあこっちにいる間に何件か来るだろ・・・・それより、」
 ちょっと言いにくそうに顔をそむけながら、ネロが尋ねる。
 「アンタ何で泣いてるんだ?」
 「馬鹿言え。俺が泣いてるなんて」
 そんな訳ないだろう、と言おうとして、ダンテは思わず言葉を飲み込んだ。試しに頬を指先で撫でてみると、確かにそこには涙が流れた形跡がある。だが、一体どうして。
 「来てみたらアンタ寝てるし、起こさなきゃと思って近寄ったら、」
 涙を流していた、ということらしい。ネロが気まずそうに視線だけをダンテの方へ向ける。何か言わなければと思うが、うまい説明が浮かばない。ダンテが黙っているのをどう受け止めたのか、ネロが言葉を続ける。
 「別に理由が聞きたいとか、そういうんじゃないから・・・・」
 それが彼なりの優しさなのだろう。まだまだネロに言っていないことはたくさんあるが、それも近いうちに告げることになるかもしれない。手で示してネロを屈ませると、ダンテはその頬に軽くキスをした。
 顔を赤くしてどこで覚えてきたのか品のない言葉で罵るネロをからかって笑う、その空気からは先程の重苦しいものは消え失せていた。色々あったが、今はこの青年の存在に少なからず救われていることを、ダンテはとっくに自覚していた。
 そんなささやかな幸せを抱きしめて生きていくのも、悪くない。今日からしばらくネロがここにいる生活を思うと、知らず頬が緩む。
 ふと、懐かしい匂いを感じた。それが今の幸福を許してくれているようだなと、ダンテはぼんやりと思った。

‐了‐



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作品名:I’m so happy,now 作家名:柳田吟