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黒も見慣れたよ

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ロマーノ-2-


 引越しの準備を進めて、数週間、その間にも折に触れてボヌフォワはやってきて、普段どおりに食事を作り、泊まっていった。彼は全く少年の独り立ちについて、知らされていないようであった、自分が言うべきではないと、保護者の違和感にはさすがに少年も気付いている。おそらく、恋人同士、二人の距離感で告げるべきタイミングがあるのだろう。たとえば一緒に住もうだとか、睦言めいた交感があるのかもしれない、などと言い訳をしつつも、きっと二人は幸せなのだと信じてやまない子供の残酷さよ! ある日少年は尋ねてしまった、何も知らないボヌフォワに、もし、もし俺が家を出て行ったらどうする、ここであいつと一緒に住むのか、と。彼はきょとんとした顔をして、肩をすくめた、まさか、恋人でもあるまいし。一瞬、はぐらかしているのかと、少年は目を丸くした、しかし追い打ちを掛けて彼はウインクまで付けて言うのだ、俺はそうなっても良いんだけどね。
 引っ越しの日、カリエドはボヌフォワを呼ばなかった。いつもなら、収穫だの耕作だの、何かにつけて呼びつけては手伝わせ、逆に呼びつけられては手伝いに行くのに。業者にも頼んだし、別段大変な作業では無かったことを鑑みても、不自然。もしかすると、少年は思うのだ、もしかすると、まだカリエドはボヌフォワに自分の引っ越しを告げていないかも、と。そうして、一人の家で寂しくいるのではないか、と。
「言い訳は要らないですよ」
 俯く少年に、少女はきっぱりと言い放った。午後の日差しが、少女を美しく照らしている。まぶしさが、目に染みて痛い。
「善行したつもりが、結果人を傷つけるなんて、よくあることじゃないですか」
 少女は軽やかな声で断言する、あるいは、断罪。
 恋人同士だと思ったから、邪魔者は家を出ようと思った、しかし二人は恋人ではないと、勘違いであったと、そうして彼を一人家に残して、自分はまんまと家を出てしまった、そうだ、どこかで、薄々一人立ちしたいという思いがあったのではないか? この機会に、言い訳が出来る機会に家を出てしまおうと、そういう考えがあったのだろう? カリエドがボヌフォワに引っ越しを伝えない理由だって、きっと少年が二人の微妙な関係に気付いたと知っているからで、結果カリエドが一人になることを、ボヌフォワが気にするだろうから、だとか、つまりは全てが、少年の責任に思えて、少年は自責に押しつぶされそうでいた、格好悪くも、じわりと涙までこぼれそうで、みっともない、しかし少女が、からりと破顔して、見せた、そもそも、大人二人が意地張り合ってるのがいけないんですよ。ハンカチを持った手を伸ばし、少年の涙をそっと拭う。
 大人はわがままで、理不尽で、難解だ。子供の理解が及ばぬ事柄がありすぎて、振り回される。自分勝手な大人たちは、今、何を考えている? 意地を張って寂しい思いをするなど、くだらない、早く折れてしまえば良い。
 日差しが、傾き始めてきた。
作品名:黒も見慣れたよ 作家名:m/枕木