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午後11時38分

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今日も寒いし、書類は山のようだし、相変わらず容赦はないし。
夜、部屋に戻る頃にはくたくたに疲れていた。
適当にシャワーだけ浴びて自分のベッドに倒れこんだ。
早く寝たい。
疲れきって冷えきった体を一刻も早く休ませようと薄っぺらい毛布を被った。
なかなか温まらない体をもぞもぞと動かしてやっと毛布に体温が移った頃
乾いた木のドアを叩く音がした。
でも気のせいにしたかった俺は無視を決め込み、枕ごと奥へと潜り込んだ。
・・・聞こえ辛いがあまり宜しくない音がする。
くぐもって聞こえるのは鍵を開ける音と、ドアを開く音。


「ギル君、いる?」

俺は返事をした覚えはねぇぞ。ノックの意味はあったのだろうか?
真鍮製のドアノブはこの家の主に握られているようだ。

「・・・俺は寝るんだ。追加の書類なら明日にしろ。」
「ヤダなぁ、違うよ。今日はすごく寒いでしょ?だから、」
「ッ!おい!」

自分の体温を逃がさない様にしていたのに、いとも簡単に毛布を剥ぎ取られた。
おまけに廊下から流れ込んでくる冷気が折角の暖かい空気を攫っていく。
疲れてるからさっさと寝たいんだ。なんて毛布を奪い返せたらどんなに素晴らしいか。
イヴァンの氷のような手が頬に触た。

「冷てぇ!」
「だって僕冷性なんだもん。」
「だからって俺で暖を取るな!」

べたべたと引っ付き、尚も俺から体温を奪おうとするイヴァンを何とか引っ剥がし
ついでに毛布の奪還にも成功した。

「もぅ、ギル君の意地悪。」
「部屋戻れよ。お前の部屋なら暖炉もあるだろ。」
「あるけど薪がきれちゃって。今すごく寒いんだ。」
「・・・知るか。」

それは俺の仕事範囲外だ。
もう一度毛布を被りなおそうとイヴァンに背を向け、横になりかけた時
ぎぅ、と胴に両手が回され、抱きしめられた。そして

「・・・ねぇ、お願いがあるんだ。」
「嫌だ。」
「まだ何も言ってないじゃない。」
「・・・なんだよ。」
「僕の部屋寒いから、一緒に寝てよ。」

氷と一緒に寝なければならなくなった。









と、まぁこんな感じで今、俺はイヴァンの部屋にいる。
正しくは真っ裸でベッドの上だ。
ここに来て暫くは本当に添い寝だけだったのに
いつからか、こいつのご趣味に付き合わされるようになった。
だから今日も然り。

イヴァンのベッドはキングサイズなもんだからかなりデカくて
真ん中に引きずり込まれると、ベッドの桟とかつかめるものが無くなる。
心もとなくて何かに縋り付きたいけど
こいつだけは絶対に嫌だ。

「ほら、ギル君。力抜いて?」
「イヴァ・・・ちょっと、待 て」
「やだ。」
「ぅ――あッぁァああぁあァ!!!」







午後11時38分。
腹を密着させるように覆いかぶさられた俺は
暴れて皺の付いたシーツを握り締め激しい律動に耐えていた。



ヴェスト。
お前が今何をしてようと
お前が幸せなら俺はいいんだ。

お前が笑っていられ る為な ら。

「あっぁ!ン・・・ッあぅ・・・!!」

何 だ って耐え  て やる。





「今は僕の事だけ考えてよ。」
シチュエーションを整えたら女が喜びそうな台詞。
ナターリヤに言ったら即ハネムーン並みの台詞を無視して
俺はまた脳味噌を空想に向けた。


時間を早める為。

意識を飛ばす為。

俺の心を守る為。

俺の精神を守る為。





            なぁ、お前は今何してる?







作品名:午後11時38分 作家名:akira