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アツヤがちょっと幸せになる話

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 それは、途方もなく長い夜だ。
 士郎の抱くよろこびもいとしさも、その感情すべてが、俺には到底理解し得ないもので、それでも震えるほどにおぞましいこの行為から俺が目を反らすことは一瞬たりとも叶わなかった。そうしてただ、鬱々とした不快感だけを孕む。
 ――俺が。俺だけが。
「……っ、染岡くん」
 士郎の身体を巡る熱、士郎の幸福、快感、あの男の名を呼ぶ上ずった声。
 俺は、士郎の内側から士郎の幸せを覗き見て、じわじわと上昇する士郎の体温を感じ、そうして士郎が目の前のこの男を心底あいしているということを知る。何度も、何度も。
「染岡くん、ぁ、染岡くんっ」
 士郎の目を通して、暗闇に浮かぶ男の輪郭をとらえる。欲情したこの男がどれほど士郎をあいしているのか俺にはわからない。
 俺は所詮士郎の中にいるひとりの人格に過ぎないから、士郎の考えはわかってもこの男の考えていることはまるでわからない。この男が士郎の名を呼ぶたび、士郎に好きだと告げるたびに、恋に浮かれた士郎は毎度馬鹿みたいに狂喜するけど、たった数年一緒に過ごしただけの男が士郎のことをどれほどあいしているというのか。
 馬鹿だよ士郎、俺がいるのに。
「あ、あ、そ、染岡くんっ、ぼく、ぼくっ……」
 士郎の瞳に涙が溜まる。歪んだ視界で、ぼやけた男の首筋めがけて手を伸ばした。男の身体も士郎の身体も、信じられないほどの熱を持ってじんわりと汗に濡れていた。士郎が男を引き寄せる。士郎の鼓動が早くなって、幸せそうに顔をゆるめた。俺はそれを士郎の中で感じていた。そうしてなぜか胸が締め付けられるような感覚を覚えた。それは途方もなく暗いさみしさだった。士郎の頬を、涙が一筋つたって落ちた。
「ぼく、いますごくしあわせだよ、染岡くん」
 士郎は言った。馬鹿だよ士郎と、俺は思った。
 俺はいつだってお前の幸せを願ってきたけど、一体どうして、お前のあいした人間がこの男なのか。
 同じ身体で同じことしても、もう同じ思いは抱けないなんて。……ああ、それでも。
 
 さみしいなんて言えるものか。お前は俺の何倍も、さみしい思いをしてきたのだから。
 ――少なくとも、俺は。俺だけは。