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Gemuetlichkeit

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ブレーメン北部で開かれた式典が終わり、ほっと胸をなで下ろす暇も与えられず、首都へととんぼ帰りをし、ベルリンで行われたイベントへと顔を出した。その夜には各国から届けられた祝辞への返礼、それと同時に外相と共に公への声明文書作成に付き合っていると、あっという間に記念すべき日の日付は変わっていた。それでも、ブレーメンでもベルリンでも、他の地方に行っても人々は上司と、上司に付き従うルートビィッヒ達を暖かく迎えてくれた事に胸を熱くした。

 それを受け、休日返上でやってきた準備が報われた瞬間だと感じた。寧ろ、この記念すべき日が休日に当たった事を感謝したいくらいだった。当日まで、メディアは、色々書き立てていたが、それを上回る程の沢山の人々の祝いと喜びを肌で感じる事ができた。

 フランシスなぞは「去年といい、今年といい、お前ら大変よね」と言い「お兄さん、そんな忙しいの耐えられない」と準備に奔走する自分を見て、関心するように、半ば呆れる様に言ってのけたが、それもまた心地よい疲労の一環だ、と伝えると「げぇ」と、腐った食べ物を食べたような顔をされた事を覚えている。

 そんな、祝賀の日が終わっても、ルートビィッヒの忙しさは変わらず仕舞いで、否、式典が終わってからの方が多忙を極めたと言ってよかった。式典準備で滞り山積していた仕事という仕事が雪崩のように自身にのしかかった。帰宅はいつも日付を越えるという日が続き、自宅に帰った記憶が曖昧になる有様だった。こんな、激務は過労大国といわれる本田ですら、味あわないのではないか?と思える様になってきたのは余裕が生まれた証拠で、ルートビィッヒは、目処のついた書類の束を満足気に眺め、送らねばならぬメールの送信ボタンをゆっくりと押すと、あてがわれた仕事場の椅子にもたれかかり、天井を仰ぎ深く安堵の息を長く吐き出した。



 やっと、週末が訪れる、そう静かに天井の染みを見ながら思った。



 疲労の所為か、いつもより長い睡眠を貪り、早朝「愛犬達の散歩に行かなくては…」と思いつつも体は言う事を効かず、兄が愛犬達を連れ出す気配を感じると安心して、再び微睡みの中に沈んで行った。いつまでも惰眠を貪っていたいと思いつつも、自分を鼓舞し、ベッドから起き上がり着替えを済ます。時刻は午前十時をとうに回っており、こんな時間に寝起きするのは数年ぶりの事だと思った。

 「兄さん、今朝はベルリッツ達の散歩を…」そう、言いながら居間に行くと兄の姿は見えず、ガレージを覗き見ると兄の愛車である空色の旧式車の姿を確認することができなかったので「ああ、どこかにでかけたのだな」と、思った。

 記念日当日はこの家にも数多の友人、知人が押しかけて大変だったと兄は語ってくれた。お前は仕事で駆り出されてる、と言うと皆、すべからくお前に会いたかった、無理はしていないだろうか?という事を聞く、全く俺の存在を無視しやがってと、同じ家に居る筈なのに顔を合わせる暇もない、そんな暇を縫って先日兄から報告を受けた。

 朝とも昼ともいえぬ、そんな時間にパンをひとかけらとコーヒーを胃に流し込むと若干覚醒したような気になり、式典準備前から読み始め、その後多忙に押し流されるように放り出していた、自国のエコノミストが書いた読みかけの経済評論集を久しぶりに読もうかという気になり、コーヒーと単行本を居間に運びソファでそれを読み始めた。

 正午の鐘を打とうかという頃、外がにわかに騒がしくなり、兄の愛車のエンジン音が近づいてきたかと思うと、激しくドアが閉められる音がし、玄関にどか、と荷物が置かれる音がした。

 兄が帰宅した、そう思い顔を上げると、紙袋を抱える兄の姿があり「おうおう、やっとお目覚めか?」と、自分を揶揄しながら「グーテンモルゲン」と同時に挨拶をされた。「恥ずかしいが、時間はすっかりグーテンタークだが」と呟きながら自分も挨拶を交わす。

「ところで、買い物に行っていたようだが、またくだらんものを大量に買いこんできたんじゃないだろうな」と言いながら兄をねめつた。すると、ぎくりと肩を一瞬震わせたので、図星であったのだろう、一拍の間があり「く…くだらねーもんなんて、買ってねぇよ!」と慌てて否定をし兄は、紙袋を居間のテーブルに奥と「いいもん買ってきてやったぜ!」と紙袋をまさぐると、一本のビール瓶を取り出した。紺碧のラベル地に王冠をあしらい、その下に自社のロゴを冠するそれは確かに、兄にとっても自分にとっても「いいもん」に他なら無かった。

「ほう!」と感嘆の声をあげる。

「奮発したんだぜー」と、がさがさと瓶を続けざまに取り出し、居間のテーブルに並べ始める。

「今夜が楽しみだな」

「なーに行ってんだよ!ヴェスト!今から飲むんだよ!」

 確かに、昼間から酒を飲むという習慣はあるのだが、昼食を食べたらやろうと思っていた残りの仕事、掃除、洗濯諸々の予定が脳裏を掠め、一瞬の躊躇が生まれた。しかし、この後色々とやる事が…と、言葉を濁すと兄は「明日も休みなんだろ!同じ家で暮らしてんのに、ここ二週間くらい全然お前と顔会わせなかったじゃねーか!先週の日曜は式典で丸一日居なかったしよ!今日くらいはお兄様に従えよ!」と、指を指され、「全然ではないだろう」と返すと「いいや、全然だ。トータル時間にしたら二週間で三時間くらいしか喋ってねぇ」と、何日前に何の話をして、一昨日に皆が祝いにきたという報告をし、と事例を並べ立て始め、変な所だけは細かいなと、辟易しながら

「わかった、わかった。付き合うから。つまみを用意してくる」

 と、いい立ち上がろうとすると

「つまみができんの待てねーよ、すぐ飲もうぜ!」と、宣い台所へ走り栓抜きだけをもって帰ってくる。

「空きっ腹に飲むのは、よくないだろう」と制すると「お前、連日祝いの残り食べまくってて、胃平気なのか?ぼっちゃんのシュニッツェルまだあるけど食う?」

 それを聞いただけで、胃がもたれ始めた。祝いの日当日この家にも無論、沢山の来客があり兄は大切な客人達を本人曰く丁重にもてなしたという。その中に旧知の間であるローデリヒとエリザベータの姿もあり、ローデリヒは「あなた方、これお好きだったでしょう」とヴィーナー シュニッツェル(ウィーン風子羊のヒレ肉)を大皿一杯に盛りつけ運んできたのだった。後ろに控えるエリザベータも同じように大鍋いっぱいにグラッシュを煮込んできており、兄は圧倒されながらも「お…おお、ありがとよ」と礼を述べたという。勿論、その他にローデリヒ特製の菓子達が用意されていたのは言わずもがなで、他の客人達にそれらを振る舞ってもなかなか、消費できない有様だった。

「全く、あの腐れぼっちゃん、俺たちがどんだけ食い意地が張ってると思ってやがんだ」そう言いつつも、ローデリヒが作る絶品の菓子の中でも兄が一番気に入っているザッハトルテは兄一人で殆ど食べてしまった事をルートビィッヒは知っていた。
作品名:Gemuetlichkeit 作家名:taniguchi