メルヘクエスト―3章
「……えーと、此処は…本の中、か?」
困惑気味に、だが素早く今己が置かれている現状を確認したアルヴィスに、ギンタ達は漸く胸を撫で下ろした。
行きましょう、と言われ促されるまま村の外―魔物が棲む森へ足を向けたギンタ達。
「ねえ、ちょっとアンタどうしたのよ!」
「そうだぞアルヴィス!やっと起きたと思ったらこんな……。」
『行きましょう。ほら、武器を持って。いくら腕に自信が有るとは言っても、媒体が無ければ魔法は使えないでしょう?』
姿形はアルヴィスなのに、話し方や物腰が物凄く機械的で…。
「気持ぃぞアルヴィス!いつものスカした態度はどうしたんだよ!」
『さて、魔物の巣窟に踏み入る前に、武器の使い方…戦い方を復習しておきましょう。』
「おいアルヴィス!」
胸倉を掴んで注意を引こうとしたギンタを止めたのはナナシだった。
「何で止めるんだよ!」
「落ち着きや!ギンタの気持ちは分かる。でもな、俺等が今せなアカン事ってなんや?条件を満たして、この本の中から出る事やろ?」
「…そうだけど!」
「なら、今は落ち着くんや。アルちゃんが心配なんは分かるけど、今の俺等にとってはこの世界の唯一の情報源なんや。」
「でもっ……………分かった。」
「そんなに気を落とすな。コイツの事は情報を引き出した後に考えりゃ良いんだからよ。」
「考えるって…どうするんスか?」
「……殴れば何とかなんだろ。」
「そんなテレビみたいな……。」
「てれび?」
「細かい事は後だ後!今は情報収集に専念しやがれ。」
「…まぁ、どうにかなるやろ。」
話を聞いた後に考える、という結論に纏まって、6人はアルヴィスへ注意を向けた。
『まず、それぞれの職業を確認しましょう――』
作品名:メルヘクエスト―3章 作家名:春雲こう