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give me, give you

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姉の営む喫茶店の手伝いを早めに上がらせてもらい、ナミはコートを羽織りマフラーを巻いて外へと出かけた。
今日は友人たちと一日早いクリスマスパーティーだ。メンバーは他の大学の子もいるが、女の子ばかりでナミも入れて10人以上、それなりに大人数だからさぞかし盛り上がることだろう。
中には彼氏がいる子もいる、だからイブ当日ではなく、前日の今日がパーティー開催日となった。ナミだって、恋人の一人や二人いてもおかしくないほどの魅力あふれる女性ではある。実際にクリスマス直前にナミに告白して玉砕した男も何人かはいた。
友人からもしつこいほどに「彼氏作らないの?」だの「恋しなよ」だの「もったいない」だの言われるが、それらにナミは「そのうちね」などと適当に返してあしらっていた。
相手がいる友人がうらやましくない、と言えば嘘になる。だがナミは、少なくとも今現在、誰かと恋人同士になりたいという願望を抱いてはいなかった。
今日のように女同士で楽しくやれればそれで充分だったし、―――何より、どうせかなわぬ恋なのだ。

近道しようと大きな公園に入ったところで、見慣れた緑色を発見した。特に行くあてもないのか、それともまた迷子になっているのか、ふらふらと噴水のあたりをうろついている。
本来なら今ごろ、緑頭のあの男―――ゾロはバイトのはずだった。休日は時給がいいからと、今日のような祝日や土日は決まって朝から晩までバイトを入れていて、隙あらばゾロと過ごしたい女の子たちに歯がゆい思いをさせている男だ。
それがこんな、まだ日が完全に落ちていないような時間から、一人で公園内にいるのはおかしい。まさか恋人ができたのではと胸の奥が揺らいだが、それならば今日ではなくて明日だろう。
いずれにせよ黙って見過ごすこともできずに、ナミは声をかけることにした。

「ゾロ!」
「……お前か」
「誰だと思ったのよ」
後ろから肩を叩いたナミに振り向いたゾロは、ほんのわずか一瞬、とても嬉しそうな顔をしてから、いつもの仏頂面に戻った。待ちわびていた相手がやっと来てくれた、そんな表情だったと気づいて、ナミの胸につきりとした痛みが走る。
「今日はバイトじゃないの?」
「あァ……今日は休みいれた」
「珍しいじゃない、何か予定でもあったの」
「あったけどなくなった」
ああそれで、とナミは納得した。どんな予定だったのか、とか、どうしてなくなったのか、とか、気になるところは多々あるが、要するにゾロは、急にぽっかりと空いた時間を有意義に過ごす術も分からずに、とりあえず近所の公園まで散歩がてら歩いてきたのだろう。
「じゃあ、今日はヒマってことよね?」
「なんだ」
これからナミは女の子同士のパーティーだ。だがずっと、今日集まる友人たちから、「ロロノアくんにも声かけてみて」と言われ続けていた。どうせバイトよ、と確かめもせずに言っていたが、バイトもなく予定もなくなったのならば、断る理由はないはずだ。
「今日、これから―――」
だから本人の意思はともかく、無理矢理にでも会場に連れて行こう、ナミがそう思ったとき、不意にナミの携帯電話が鳴った。
「ごめん、ちょっと待ってて……もしもし?」
待ってて、と言われ、ゾロは律儀にナミの前で待っている。ナミが何かを言いかけたことも気になっているのだろう。
「あ、うん、今そっちに向かってるところ、それでね」
電話の相手は、ナミがこれから行こうとしていたパーティーの幹事からだった。ちょうどいい、ゾロを連れて行くといったら喜ぶだろうと思ったナミの言葉を遮って、電話の向こうは楽しそうに何やら賑わっている。そして「すごいゲストが来てくれたんだよ!」という声の後、ナミの耳にとても聞きなれた―――だが本来そこにいるはずのない男の声が入り込んだ。
作品名:give me, give you 作家名:やまこ