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北野ふゆ子
北野ふゆ子
novelistID. 17748
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【APH/海賊パラレル】海賊王と東洋の秘宝・序【セカ菊・朝菊

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 むかし、むかし。
 東の果ての、小さな国の、小さな浜辺に、小さな村がありました。

 村の森には、一匹の狐が住んでおりました。
 名前を耀と言いました。
 耀狐はこの小さな村を守る神様で、もう何百年、何千年と生きています。

 耀狐には、三人の血の繋がらない弟妹がいました。
 村の人々に「かまいたち三兄弟と呼ばれる三人の弟妹は、人を転ばせ、人を切り、そして薬を塗る、悪戯好きの悪童でした。
 三兄弟の悪戯に困った耀狐は、弟妹達にあるおまじないをかけました。
 兄弟達の腕、手首、首にそれぞれ小さな宝珠をつけて、力を封印したのです。
「これで少しは大人しくなるある」
 耀狐は安心しました。

 ある日、耀狐に新しい弟ができました。
 森の裏山でみつけた、迷子の子狐です。周りに兄弟も親の姿も見当たらなく、たった一人で草むらに座り込んでいたのを拾ってきたのです。
 身に着けていた着物に白と黄の花柄の染めがあったので、耀狐は新しい弟に「菊」と名づけました。

 菊には、耀狐よりも、三弟妹よりも大きな大きな力が宿っていました。
 菊が泣けば雨が降り、
 菊が怒れば雷が落ち、
 菊が転べば地が揺れ、
 菊の喉が渇けば乾季となり、
 菊の腹が空けば飢饉となり、
 そして菊が笑えばお天道様も笑う。
 村の守り神である耀狐でさえ、菊のお守りは大変でした。
 なぜなら、菊が拗ねて愚図るだけで、海が時化て魚が獲れなくなってしまうのです。大嵐がきて、畑の作物が死んでしまうからです。

「我にも手に負えないある…」
 耀狐は、三兄弟につけたものより更に強い呪(まじな)いをかけた封印の宝珠を、菊の足首に着けました。
「にーに…これ邪魔です」
 菊は黒豆のような瞳を耀狐に向けて、口を膨らましました。
「いいから。これはおまじないあるよ。お前がここで我らとともに、静かに幸せに暮らせるように願いをこめたある」
「にーにや、湾ちゃんや香くんや勇くんと…」
 菊の桜の花びらのような口が、大好きな兄弟たちの名前を呟きました。
「そうある」
 耀狐が大きく頷くと、
「はい」
 菊も同じように頷くのでした。

 こうして、仲の良い狐の兄弟たちは、海辺の村の森の奥で、村の守り神として静かに幸せに暮らしましたとさ。