【APH/海賊パラレル】海賊王と東洋の秘宝・序【セカ菊・朝菊
むかし、むかし。
東の果ての、小さな国の、小さな浜辺に、小さな村がありました。
村の森には、一匹の狐が住んでおりました。
名前を耀と言いました。
耀狐はこの小さな村を守る神様で、もう何百年、何千年と生きています。
耀狐には、三人の血の繋がらない弟妹がいました。
村の人々に「かまいたち三兄弟と呼ばれる三人の弟妹は、人を転ばせ、人を切り、そして薬を塗る、悪戯好きの悪童でした。
三兄弟の悪戯に困った耀狐は、弟妹達にあるおまじないをかけました。
兄弟達の腕、手首、首にそれぞれ小さな宝珠をつけて、力を封印したのです。
「これで少しは大人しくなるある」
耀狐は安心しました。
ある日、耀狐に新しい弟ができました。
森の裏山でみつけた、迷子の子狐です。周りに兄弟も親の姿も見当たらなく、たった一人で草むらに座り込んでいたのを拾ってきたのです。
身に着けていた着物に白と黄の花柄の染めがあったので、耀狐は新しい弟に「菊」と名づけました。
菊には、耀狐よりも、三弟妹よりも大きな大きな力が宿っていました。
菊が泣けば雨が降り、
菊が怒れば雷が落ち、
菊が転べば地が揺れ、
菊の喉が渇けば乾季となり、
菊の腹が空けば飢饉となり、
そして菊が笑えばお天道様も笑う。
村の守り神である耀狐でさえ、菊のお守りは大変でした。
なぜなら、菊が拗ねて愚図るだけで、海が時化て魚が獲れなくなってしまうのです。大嵐がきて、畑の作物が死んでしまうからです。
「我にも手に負えないある…」
耀狐は、三兄弟につけたものより更に強い呪(まじな)いをかけた封印の宝珠を、菊の足首に着けました。
「にーに…これ邪魔です」
菊は黒豆のような瞳を耀狐に向けて、口を膨らましました。
「いいから。これはおまじないあるよ。お前がここで我らとともに、静かに幸せに暮らせるように願いをこめたある」
「にーにや、湾ちゃんや香くんや勇くんと…」
菊の桜の花びらのような口が、大好きな兄弟たちの名前を呟きました。
「そうある」
耀狐が大きく頷くと、
「はい」
菊も同じように頷くのでした。
こうして、仲の良い狐の兄弟たちは、海辺の村の森の奥で、村の守り神として静かに幸せに暮らしましたとさ。
作品名:【APH/海賊パラレル】海賊王と東洋の秘宝・序【セカ菊・朝菊 作家名:北野ふゆ子