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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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2/13 pm23:30

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 カンカンと小気味良い音が寒空に響きかせながら、古いアパートの階段を降りていく。
 最後のの二段をトンと両手を挙げて着地した。観客でも居れば階段など使わずに降りることも可能だが、そんな技は必要な時まで伏せておく方がいい。
 例えば、帝人の目前でそんな降り方をすれば、彼はどんな反応を見せるだろうか、慌てるふためき、無事な着地に安堵する姿、自然に思い浮かぶ光景に口許が緩む。だが、その後に、彼は賞賛するのか、呆れるのか、それは思い浮かばず試してみる価値はありそうだとほくそ笑む。
 緩んだ唇には未だ感触が残っている。刺激的な甘い感覚が、妄想から現実へと感覚を引き戻し、先から過去へと思考を誘導する。
「あれは驚いたなぁ」
 白い指先が淡い唇をなぞっていく、口内にはまだ安っぽいチョコレートの味が残っている。
 彼は普通の気の弱い少年であり、臨也にとって理想的な反応をする模範的な人間だった。だが、あの行動はソレからは逸脱している。彼への興味が尽きないのはその一点にあるとも言える。
 帝人の見せる情熱的な行動は、臨也の範囲から離れることがある。彼の愛する人間から乖離することにもなるが、観察対象としては益々面白みが沸いてくる。
 彼は理想的な人間だ。愛すべき人間の全てが詰まっている。だからこそ、もっと、もっと彼の中に潜む様々な顔を見たいのだ。それを全て露わにするのは自分の役目だ。
 まるで、服を一枚一枚ナイフで切り割いていく、白い肌を露わにさせていくように彼を全てを露見させたい。薄い皮膚切り裂き赤く、紅く、染めていきたい。痛みで彼が嘆き、絶望に慟哭する様がみたい、ギャラリーも居れば最高だ。彼が何を吐き出し、感じるのかが知りたい。 それを思うだけで、ゾクゾクと歓喜が背筋を奮わせていく。


 愛してる。愛してる。愛してる。愛している。

 人を愛している。人間を、全てを――――

 最も人間らしい彼を愛している。
 囁く愛の代わりに、彼の欲するモノを与えよう。
 夜空に輝く星々はまるで人間のようだ。暗闇に光るちっぽけな光は、同じように見えるが一つ一つ実は違うモノだ。臨也はそれを愛してる。深淵となってそれを全て包む空になりたいと思う程に、愛している。
 星空を包み込むように大きく腕を開き、くるくると臨也は周り始めた。愛してる、愛してると何度も繰り返しながら…………
 裾のファーがくるりと白い半円を描く、上空から照らす月のそれと地上のそれとはよく似ていた。
 くるくると舞ながら灯りがまだ灯る彼の部屋を見上げた。ゆっくりと両手を広げ捧げるように手を上げた。

 愛してる。愛してる。愛してる。愛してる。
 
だから、君の望むモノを捧げよう。深淵へと引きずり込む俺を彼はどう受け止めるのだろう。恐れるのか、敬うのか、挑むのか、逃げるのか、嘆くのか、それとも愛するのか…………

 愛されたい。愛されたい。愛されたい。愛されたい。

 こんなにも愛しているのだから、彼は俺を愛するべきだ。その為の全ては整えよう。
 灯火は消え、部屋は夜の暗闇へと溶けていった。
 捧げよう彼に、彼を欲するモノを――――




「君が大好きな非日常をたっぷりとね」


作品名:2/13 pm23:30 作家名:かなや@金谷